中華料理店や台湾の屋台で見かける「おやき」。日本の長野名物のおやきとは、見た目も中身も少し違います。中華料理のおやきとは、小麦粉の生地で具を包んで平たく焼いた「餅(ピン)」と呼ばれる料理のこと。もちもちの皮とジューシーな餡が魅力です。
中華おやきの代表は、肉や野菜の餡を包んで焼く「シャーピン(餡餅)」。家庭のフライパンでも手軽に作れて、おかずにも主食にもなる一品です。
この記事では、中華おやきとは何かという基本から、シャーピンや葱油餅といった種類の違い、家庭で作る基本レシピ、アレンジまでをまとめて紹介します。
中華料理の「おやき」とは?日本のおやきとの違い
中華料理のおやきとは、小麦粉で作った生地に具を包んだり巻いたりして、平たく焼き上げた料理の総称です。中国語では「餅(ビン/ピン)」と呼ばれ、いわゆる甘いお餅ではなく、小麦粉を焼いた料理を指します。日本の長野で親しまれるおやきとは、生地も具も作り方も異なります。
日本では中華料理店の点心の一皿として、中国の北方や台湾では屋台・朝食店の定番として売られています。「中華おやき」は日本側でつけられた呼び名で、中国語では料理ごとに別々の名前がついています。現地の店で頼むときは、それぞれの料理名を使うことになります。

中華おやきの正体は「餅(ピン)」料理
中国には小麦粉を使った「餅(ピン)」という料理のグループがあります。生地で具を包んで焼いた「餡餅(シャーピン)」や、ねぎを巻き込んで焼いた「葱油餅(ツォンヨウピン)」などが代表例です。日本で「中華おやき」と呼ばれるのは、主にこの餡餅を指すことが多くなっています。
日本(長野)のおやきとの違い
長野のおやきは、小麦粉やそば粉の生地で野菜の煮物やあんこを包み、焼いたり蒸したりして仕上げる郷土料理です。一方の中華おやきは、肉や野菜の餡を包んで油でこんがり焼くのが基本。生地の材料や調理法、味付けの方向性に違いがあります。
日本のおやきと中華おやきの違い
日本(長野)のおやきは、野菜やあんこを包んで焼く・蒸す郷土料理。素朴な味わいが特徴です。
中華おやきは、肉や野菜の餡を包んで油で焼く料理。香ばしくジューシーな仕上がりが特徴です。
| 比較項目 | 日本(長野)のおやき | 中華おやき(シャーピン) |
|---|---|---|
| 生地 | 小麦粉・そば粉など | 主に小麦粉 |
| 主な具 | 野沢菜・なす・あんこなど | 豚ひき肉・ニラ・ねぎなど |
| 調理法 | 焼く・蒸す | 油でこんがり焼く |
| 味の方向 | 素朴・和風 | 香ばしくジューシー |
中華おやきの主な種類(シャーピン・葱油餅など)
中華おやきと一口に言っても、いくつか種類があります。代表的なのは具を包む「餡餅(シャーピン)」と、ねぎを巻き込む「葱油餅(ツォンヨウピン)」です。それぞれ生地の作り方や中身が違うので、好みに合わせて選べます。
小麦粉の料理を主食に近い形で食べる中国北方は、とくに餅の種類が豊富です。屋台や朝食店では大きな鉄板でまとめて焼き、1枚ずつ紙に包んで手渡す売り方が見られます。小麦の主産地である華北では米よりも麺や餅が日常の主食で、朝食から夜食まで粉ものを出す店が通りに並びます。
餡餅(シャーピン)|具入りの定番
餡餅は、薄くのばした生地に肉や野菜の餡をたっぷり包んで、平たく焼いた中華おやきです。読み方は「シャーピン」または「シャンピン」。豚ひき肉とニラを合わせた餡が定番で、外はカリッと香ばしく、中はジューシーに仕上がります。日本で中華おやきといえば、まずこの餡餅を指すことが多いでしょう。
中国語での表記は「餡餅」、簡体字では「馅饼」と書き、標準中国語の発音(ピンイン)は xiàn bǐng です。日本語のカタカナ書きは一定ではなく、「シェンビン」と表記されることもありますが、指している料理は同じものです。「馅」は具、「饼」は小麦粉を平たく焼いたものを表す字なので、名前がそのまま「具入りの焼き餅」という意味になります。
葱油餅(ツォンヨウピン)|ねぎを巻いたシンプル系
葱油餅は、生地に油を塗ってから刻んだねぎを巻き込み、層を作って焼いた餅です。具を包むのではなく、生地そのものに風味をつけるのが特徴。サクサク・もちもちの食感とねぎの香りが楽しめます。シンプルな材料で作れるので、おやつや軽食にもぴったりです。
繁体字では「蔥油餅」と書き、ピンインは cōng yóu bǐng。台湾では焼くときに卵を落として一緒に焼く食べ方も広く親しまれ、朝食や軽食として売られています。焼き上がりを菜箸で軽くほぐすと層がはがれ、サクサクした食感がはっきりします。

同じ「餅(ピン)」でも、具を包むタイプと生地に練り込むタイプで全然ちがう食感になるんですね。
その他(空心餅・肉末焼餅など)
このほかにも、中が空洞になるように焼いた「空心餅(コンシンピン)」や、その空洞に肉そぼろを挟んだ「肉末焼餅(ローモーシャオピン)」などがあります。中国は地域ごとに餅料理のバリエーションが豊富で、屋台や朝食の定番として親しまれています。
空心餅は焼くときに生地の内側で蒸気がふくらみ、割ると中が空洞になることから、そのまま「空心」の名がついています。肉末焼餅はこの空洞に煮込んだ肉そぼろを詰めるので、外側の香ばしさと中身のしっとり感が一度に味わえます。同じ「餅」でも、包む・巻く・ふくらませるという作り方の違いで呼び名が分かれていきます。
中華おやき(シャーピン)の基本レシピ
ここからは、家庭で作れる中華おやき(シャーピン)の基本レシピを紹介します。特別な材料は不要で、フライパンひとつで作れます。豚ひき肉とニラの定番餡で、もちもちの皮とジューシーな中身を目指しましょう。
下の分量は、直径12cm前後のものが4枚できる目安です。1人1〜2枚として2〜3人分にあたり、主食にするなら1人2枚を見込んでおくと足ります。
作業時間はこねるのに5分、生地を休ませるのに30分、包んで焼くのに15〜20分ほど。フライパンの大きさによっては2回に分けて焼くので、全体で50分前後を見ておくと余裕があります。生地を休ませている間に餡を作ると、待ち時間をほとんど感じずに進みます。


材料(2〜3人分)
生地と餡に分けて用意します。分量は目安なので、お好みで調整してください。
粉200gに対して水110〜120mlは、粉の重さの55〜60%にあたる量です。これより水が少ないとのばしたときに縁が割れやすく、多いとべたついて包みにくくなります。餡は1枚あたり50g前後を目安にすると、生地の厚みとのバランスがとりやすくなります。豚ひき肉は赤身だけのものより脂の混じったものを選ぶと、焼いたときに肉汁が出てパサつきにくくなります。
| 区分 | 材料 | 分量の目安 |
|---|---|---|
| 生地 | 薄力粉(または中力粉) | 200g |
| 生地 | ぬるま湯 | 110〜120ml |
| 生地 | 塩 | ひとつまみ |
| 餡 | 豚ひき肉 | 150g |
| 餡 | ニラ(または長ねぎ) | 1/2束 |
| 餡 | しょうゆ・ごま油 | 各小さじ1〜2 |
| 餡 | おろし生姜・塩こしょう | 少々 |
| 焼き用 | サラダ油 | 適量 |
作り方の手順
生地を休ませる時間をとると、のばしやすく破れにくくなります。
薄力粉に塩を混ぜ、ぬるま湯を少しずつ加えながら混ぜます。ひとまとまりになったら、なめらかになるまで5分ほどこねましょう。
こねた生地をラップで包み、室温で30分ほど休ませます。グルテンが落ち着き、のばしやすくなります。
豚ひき肉に刻んだニラ、しょうゆ、ごま油、生姜、塩こしょうを加えてよく混ぜます。粘りが出るまで混ぜると、まとまりやすくなります。
休ませた生地を等分し、麺棒で円形にのばします。中央に餡をのせ、ふちを寄せて包み、とじ目を下にして軽く平たくつぶします。
油をひいたフライパンを中火で熱し、両面をこんがり焼きます。少量の水を加えてふたをし、蒸し焼きにすると中までしっかり火が通ります。
焼き時間の目安は中火で片面2〜3分ずつ。両面に焼き色がついたら水を大さじ2ほど加えてふたをし、3〜4分蒸し焼きにします。最後にふたを外して30秒〜1分焼くと、余分な水分が飛んで表面が香ばしく戻ります。
ひき肉を使うので、中心までしっかり火を通すことが大切です。厚生労働省が家庭向けに示す加熱の目安は、中心部の温度が75℃で1分間以上(家庭でできる食中毒予防の6つのポイント)。竹串を中心まで刺してみて、出てくる肉汁が澄んでいれば火が通ったサインです。
もちもちに仕上げるコツ
皮をもちもちにする最大のポイントは、生地をしっかり休ませることです。焼くときは中火を保ち、強火にしすぎないこと。表面が焦げる前に中まで火を通すため、ふたをして蒸し焼きにするのがおすすめです。
うまくいかないときは、原因がだいたい3つに絞れます。生地が硬くてのびないときは水が足りていないので、ぬるま湯を小さじ1ずつ足してこね直します。焼いている間に縮んで丸まるときは休ませ方が足りていないサインで、もう5〜10分置いてからのばすと落ち着きます。皮がべちゃつくときは水分か油が多すぎるので、ふたを外して水分を飛ばしてください。
生地は休ませる、焼くときは蒸し焼きに。この2点を押さえるだけで、お店のようなもちもち食感に近づきます。
中華おやきのアレンジと食べ方
基本のシャーピンに慣れたら、餡や食べ方を変えてアレンジを楽しめます。具材を入れ替えたり、タレを工夫したりするだけで、印象がぐっと変わります。
焼きたてをそのまま食べるだけでなく、お弁当や軽食に回せるのも中華おやきの使いやすいところです。冷めると皮が締まってくるので、弁当に入れるなら半分に切り、断面を上にして詰めると食べやすくなります。餡の水分が多いアレンジほど、冷めたときに皮がやわらかくなります。持ち運ぶ日は水気の多い野菜を控えめにしておくと扱いやすくなります。


餡のアレンジ
餡は豚ひき肉以外にも、いろいろな組み合わせが楽しめます。野菜を多めにすればさっぱりと、チーズを加えればコクのある味わいになります。
- 牛ひき肉+クミンで、より本格的な中華風に
- 春雨・白菜を加えてヘルシーに
- むきえびを混ぜてぷりぷりの食感に
- チーズを少量入れて、とろける一品に
牛ひき肉にクミンを合わせるときは、小さじ1/4ほどから始めると香りが立ちすぎません。春雨は戻してから1cm幅に刻むと、餡から出る水分を吸ってくれるので包みやすくなります。むきえびは粗く刻んで豚ひき肉と半々にすると、食感を残したままひとつにまとまります。チーズは加熱でとけて流れ出やすいため、ひき肉に混ぜ込まず、餡の中心に置いてから包むと外に漏れにくくなります。
おすすめのタレ・食べ方
そのままでも十分おいしいですが、タレを添えるとさらに楽しめます。黒酢じょうゆや、しょうゆ+ラー油の組み合わせが定番。葱油餅の場合は、生地に塩気があるのでタレなしでもおいしくいただけます。焼きたての熱いうちに食べるのが一番です。
黒酢じょうゆは黒酢としょうゆを1対1で合わせ、好みでラー油を数滴たらすと味が締まります。白髪ねぎや香菜を添えると、油の重さがやわらいで最後まで食べやすくなります。切り分けるときは焼き上がりから2〜3分おくと、中の肉汁が落ち着いて崩れにくくなります。


作り置きと保存の目安
時間のあるときは、焼く前の段階まで作って保存しておけます。包んで平たくした状態でラップにくるみ、冷蔵なら当日中に、冷凍なら金属トレーの上で凍らせてから保存袋に移します。家庭の冷凍庫は開け閉めで温度が変わりやすく、農林水産省は家庭で冷凍した食品を2〜3週間以内に使い切るよう案内しています。
凍らせたものを焼くときは、解凍せず弱めの中火でじっくり火を入れます。焼き色がついたところで水を加えてふたをすると、中心まで火が通ります。生地だけを先に作っておく場合は、乾かないようラップで包んで冷蔵し、翌日までに使い切ってください。


中華おやきのよくある質問
- 中華おやきは冷凍保存できますか?
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焼いたあとに冷凍できます。粗熱をとってから1個ずつラップで包み、冷凍用保存袋に入れてください。食べるときは電子レンジで温めたあと、フライパンで軽く焼き直すと、皮の食感が戻りやすくなります。
- 焼いている途中で皮が破れてしまいます。
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餡を入れすぎているか、生地が薄すぎる可能性があります。餡の量を控えめにし、生地のふちはやや厚めに残して包むと破れにくくなります。とじ目をしっかり閉じることも大切です。
- 強力粉と薄力粉、どちらを使えばいいですか?
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もちもち感を強めたいなら強力粉、扱いやすさ重視なら薄力粉が向いています。半々で混ぜると、もちもち感と扱いやすさのバランスがとれます。
- 餡を肉なしにできますか?
-
可能です。にら・卵・春雨などを使えば、肉なしでも食べ応えのある餡になります。葱油餅のように、ねぎと油だけで作るシンプルなタイプもおすすめです。
- 肉まんや餃子とは何が違いますか?
-
生地と火の入れ方が違います。肉まんはふくらませた生地で包んで蒸すのでふんわり、餃子は薄い皮で包んでゆでたり焼いたりします。シャーピンはふくらませない生地を平たくのばして油で焼くため、皮の香ばしさと厚みが持ち味です。同じ豚ひき肉の餡でも、仕上がりの食感はまったく別物になります。
まとめ
中華料理のおやきとは、小麦粉の生地で具を包んで焼く「餅(ピン)」料理のこと。代表格は具入りの「餡餅(シャーピン)」で、ねぎを巻いた「葱油餅」などの種類もあります。日本の長野のおやきとは、生地や具、調理法が異なります。
- 餡餅(馅饼・xiàn bǐng)は具入り、葱油餅はねぎを巻き込んで層にしたタイプ
- 生地は粉200gに水110〜120ml(加水55〜60%)、30分休ませてからのばす
- 焼きは中火で片面2〜3分、水を加えて3〜4分蒸し焼きにして中心まで火を通す
- 焼く前に成形して冷凍でき、家庭で冷凍した分は2〜3週間以内に使い切る
翌日に回した分の温め直しは、同じくもちもちした皮を持つベーグルのやり方がそのまま使えます。












