9月の行事食ガイド|重陽の節句・十五夜・お彼岸の食べ物と由来

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9月は、行事が集中する月です。重陽の節句にお月見、そして秋のお彼岸。それぞれに昔から食べられてきた料理があります。

ただ、5月の端午の節句や7月の七夕にくらべると、9月の行事食はあまり知られていません。「十五夜に月見団子」くらいは思い浮かんでも、重陽の節句に何を食べるかまでは、ぱっと出てこない方も多いはずです。

この記事では、9月の主な行事とその行事食を、由来もあわせて整理しました。作り方の細かい手順ではなく、「なぜそれを食べるのか」がわかる内容にしています。

秋は行事が続くので、まとめて把握しておくとラクですよ。

目次

9月の行事食とは?秋の行事と食べ物カレンダー

9月の行事食は、大きく3つの行事に集約されます。重陽の節句、十五夜(お月見)、そして秋のお彼岸です。いずれも収穫の季節と結びついているのが特徴といえます。

用意する側から見ると、9月は下旬に行事が重なる月です。月見団子とおはぎは日持ちしないので、供える日の朝か前日に手当てします。栗や里芋、小豆は日持ちするので、下旬に入る前にそろえておくと当日が軽くなります。行事のために買い足すのは団子の粉や小豆、ススキなど数点だけで、残りは普段の買い物の範囲でそろいます。

9月の主な行事一覧(2026年)

2026年の9月は、行事が下旬に集中します。日付が固定のものと、年ごとに動くものが混在するので注意してください。

行事2026年の日付代表的な行事食
二百十日9月1日(風鎮めの祭り。特定の食なし)
重陽の節句9月9日菊酒・栗ごはん・なす料理
敬老の日9月21日(第3月曜)赤飯など(決まりはなし)
秋分の日・お彼岸9月23日(彼岸は20日〜26日)おはぎ・精進料理
十五夜(中秋の名月)9月25日月見団子・里芋

十五夜は旧暦にもとづくため、毎年日付が変わります。2026年は9月25日ですが、10月にずれこむ年もあります。

「行事食」と「秋の実り」の関係

9月の行事食には、栗・里芋・小豆といった秋の実りが集中して登場します。これは偶然ではありません。収穫を感謝し、次の実りを願うという意味が、行事そのものに組みこまれているからです。

とくに十五夜が「芋名月」と呼ばれるように、その時期に採れるものを供えるのが基本の考え方でした。旬の食材と行事食は、もともと切り離せない関係にあります。

9月に何が旬を迎えるかは、こちらの記事にまとめています。

重陽の節句(9月9日)の行事食

菊の花を浮かべた菊酒と栗ごはんのイメージ写真

重陽の節句の行事食は、菊料理・栗ごはん・なす料理の3つが柱です。五節句のひとつでありながら、現代ではもっとも影が薄い節句かもしれません。

用意するなら、当日に火を使う料理をひとつに絞ると、平日にあたる年でも回ります。9月9日は祝日ではないので、材料は前の週末までに買い置きしておけば、当日は調理だけに集中できます。とくに食用菊は出まわるのが秋のあいだに限られるため、売り場で見かけた日に買って冷蔵しておくと確実です。あとは帰宅してから20分ほどあれば、一品を仕上げて食卓に出せます。

菊酒・菊のお浸し|菊を食べる理由

重陽の節句は「菊の節句」とも呼ばれます。菊は古くから邪気を払う花とされ、宮中では菊を浮かべた酒を酌み交わす習わしがありました。

家庭で楽しむなら、食用菊を使ったお浸しや酢の物が手軽です。スーパーでは「もってのほか」「阿房宮」といった名前で並んでいます。花びらをほぐし、酢を少し入れた湯でさっとゆでると、色鮮やかに仕上がります。

食用菊の下ごしらえ

  • 花びらをガクから外し、ほぐす
  • 湯に酢を少量加え、20〜30秒ゆでる
  • 冷水にとってから水気をしぼる

酢を加えるのは、色を保つためです。ゆですぎると香りも食感も失われます。

栗ごはん|「栗の節句」とも呼ばれるわけ

重陽の節句には、栗ごはんを炊く風習もありました。庶民の間では菊よりも身近だったため、「栗の節句」という呼び名が定着した地域もあります。

ちょうど新栗が出まわる時期と重なるのが大きな理由です。宮中の雅な菊の行事が、農村では収穫祝いの形に置きかわっていったと考えられています。

家庭で炊くときの目安は、米2合に皮をむいた栗150〜200g、塩は小さじ1弱と酒大さじ1ほどです。米を浸してから栗を上に広げ、普通に炊けば十分に仕上がります。もち米を2〜3割混ぜるとおこわに近い食感になり、ごま塩をふると見た目も秋らしくなります。

なす料理|「くんちに茄子」の言い伝え

「くんちに茄子を食べると中風にならない」という言い伝えが、各地に残っています。「くんち」は9日のことで、9月9日・19日・29日の三日を指す地域もあります。

もちろん、これは医学的な根拠にもとづくものではなく、あくまで昔からの言い伝えです。とはいえ秋なすは実がしまっておいしい時期。焼きなすや煮びたしで味わうのに、ちょうどよい口実になります。

焼きなすにするなら、へたの下に浅く一周切り込みを入れ、魚焼きグリルで皮が黒くなるまで焼きます。焼き上がりを水にとると、皮がするりとむけます。煮びたしは乱切りにして油で炒め、だしとしょうゆで数分煮るだけです。どちらも冷蔵で2日ほどを目安に食べきれるので、前日のうちに作っておけます。

十五夜・お月見(2026年は9月25日)の行事食

十五夜の行事食は、月見団子と里芋が二本柱です。ススキや秋の草花とともに供え、月を眺めながらいただきます。

当日そろえるのは、団子・供える台・ススキの3つです。団子は白玉粉や上新粉があれば30分ほどででき、市販品を使うなら夕方までに買っておきます。供える場所は月の見える窓辺や縁側で、月が出る前に並べておくと落ち着いて眺められます。夕食のあとに供え、そのまま家族でいただく形でもかまいません。

国立天文台の解説によると、中秋の名月と満月の日付は必ずしも一致しません。満月が1〜2日あとになる年もあるため、当日の月がわずかに欠けて見えることがあります。

月見団子|数と積み方の決まり

月見団子の数には、二通りの考え方があります。十五夜にちなんで15個とする説と、その年の月の数(平年12個・うるう年13個)とする説です。どちらでも間違いではありません。

15個の場合は、下から9個・4個・2個とピラミッド状に積みます。三方や皿に白い紙を敷いて盛るのが正式な形ですが、家庭なら平皿でも十分です。

STEP
土台を並べる

皿の上に9個を3列×3列に並べます。ここが一番広い段になります。

STEP
中段を重ねる

その上に4個を2列×2列で乗せます。団子のくぼみにはまるよう位置を調整します。

STEP
最上段を乗せる

最後に2個を乗せて完成です。正面から見て縦に2個並ぶ向きにします。

地域によって形も違います。関西では里芋に見立てた細長い団子にあんこを巻き、名古屋ではしずく型の三色団子を供える例が知られています。

里芋|「芋名月」と呼ばれる由来

十五夜には、里芋を供える習わしがあります。このため十五夜は「芋名月」とも呼ばれてきました。

もともと十五夜は、里芋の収穫を祝う行事だったという見方があります。米が広まる以前、里芋は重要な作物でした。皮ごと蒸した「きぬかつぎ」は、その名残を今に伝える料理です。

団子より先に、里芋のほうが供えられていたんですね。

きぬかつぎは、子芋を皮つきのまま洗い、上から3分の1ほどの皮をぐるりとむいてから15〜20分蒸します。竹串がすっと通れば火が通った合図で、下側の皮をつまむと中身が押し出せます。蒸し器がなければ、耐熱皿に並べてラップをかけ、600Wの電子レンジで5〜6分を目安に加熱しても作れます。塩を少しふるだけで食べられるので、月見の膳に添えやすい一品です。

ススキと季節の野菜を供える意味

ススキは、稲穂に見立てて供えられます。本来なら実った稲を供えたいところですが、十五夜の時期はまだ収穫前。そこで形の似たススキが代わりを務めるようになりました。

ススキの切り口が鋭いことから、魔除けの意味も込められています。あわせて枝豆・栗・ぶどうなど、その時期に採れたものを供えるのが一般的です。

用意する本数は3〜5本もあれば十分です。花瓶に立てて供え物の後ろに置くと、皿と重ならず月に向けて飾れます。ススキは秋の七草のひとつで、古くは尾花と呼ばれました。萩や葛、撫子も同じ七草に数えられるので、花屋で秋の草花を選ぶときの目安になります。

秋のお彼岸(9月20日〜26日頃)の行事食

おはぎを皿に盛りつけた和風のイメージ写真

秋のお彼岸の行事食といえば、おはぎです。秋分の日を中日として、前後3日ずつの計7日間がお彼岸にあたります。

7日間は長いので、彼岸入りと中日の2日に予定を寄せると動きやすくなります。彼岸入りの前に仏壇まわりを整え、花と線香を新しくしておきます。供える数は、家族の人数に仏前の分を足して決めると足りなくなりません。墓参りに出る日は午前のうちに済ませておくと、午後の支度に時間を回せます。

おはぎ|ぼたもちとの違い

おはぎとぼたもちは、基本的に同じ食べ物です。違うのは呼び名と、食べる季節にあります。

項目おはぎぼたもち
時期秋のお彼岸春のお彼岸
名前の由来萩の花牡丹の花
あんこつぶあんが多いこしあんが多い

あんこの違いには理由があります。小豆の収穫は秋。採れたての小豆は皮がやわらかいため、皮ごと使うつぶあんにできました。一方、春まで保存した小豆は皮が固くなるので、こしあんにしたというわけです。

家で作るなら、もち米だけで炊くとやわらかく、うるち米を半量混ぜると米粒の食感が残ります。大きさは1個60g前後、直径5cmほどを目安にすると食べやすくなります。市販のつぶあんを使えば、米を炊いてつぶす作業だけで済みます。時間がたつと固くなるので、当日中に食べきるか、1個ずつラップで包んで冷凍します。

精進料理・彼岸そばなど

お彼岸には、肉や魚を使わない精進料理を用意する家庭もあります。煮しめ、白和え、天ぷらなどが定番です。

地域によっては、彼岸そば・彼岸うどんを食べる習わしも残っています。季節の変わり目に、胃にやさしいものをとるという意味合いがあったようです。

煮しめは前日に作っておくと味がしみ、当日は温めるだけで出せます。だしを昆布と干ししいたけでとると、肉や魚を使わなくても味の輪郭がはっきりします。白和えは豆腐の水切りに30分ほどかかるので、朝のうちに始めておくと余裕ができます。彼岸そばは、ゆでたそばに温かいつゆをかけ、きのこや青ねぎを添えるだけでも形になります。

敬老の日(9月21日)に食べたいもの

敬老の日には、決まった行事食がありません。1966年に制定された比較的新しい祝日のため、伝統的な献立が定着していないのです。

集まる人数と時間帯を先に決めると、献立はおのずと絞れます。昼に集まるなら赤飯と煮物、夕方に短く集まるなら和菓子とお茶の組み合わせで足ります。敬老の日は9月の第3月曜なので、秋分の日と近い年は連休になりやすく、外食や仕出しを頼むなら早めの予約が安心です。離れて暮らしている場合は、日持ちする菓子や果物を前日までに届ける形も選べます。

赤飯や長寿を願う食材を選ぶ

お祝いの席として考えるなら、赤飯が無難な選択です。ほかにも、縁起のよさから選ばれる食材があります。

  • 鯛……「めでたい」の語呂合わせ
  • 海老……腰が曲がるまでの長寿を願う
  • 昆布……「よろこぶ」に通じる
  • 赤飯……小豆の赤色が邪気を払うとされる

ただし、形式にこだわりすぎる必要はありません。硬いもの・のどに詰まりやすいものは避け、相手が食べやすい献立にすることのほうが大切です。

献立を考えるときの注意点:おもちや大きめの団子は、のどに詰まらせる原因になります。小さく切る、やわらかく煮るといった配慮を。持病で食事制限がある場合は、事前に確認しておくと安心です。

二百十日・防災の日と9月の暦

9月1日は二百十日にあたり、防災の日でもあります。立春から数えて210日目で、昔から台風が多い時期として警戒されてきました。

特定の行事食はありませんが、富山の「おわら風の盆」など、風を鎮める祭りが各地で行われます。台風シーズンにあたるため、備蓄食品を見直すきっかけの日と考えるのもよいでしょう。

立春から220日目にあたる二百二十日(9月11日ごろ)も、二百十日と並んで農家が警戒してきた日です。どちらも稲の花が咲く時期にあたり、強い風が実りを左右するため、暦のうえで注意をうながしてきました。富山市八尾のおわら風の盆は、毎年9月1日から3日にかけて行われます。

食の面では、備蓄の点検日にあてるのが分かりやすい使い方です。内閣府は各家庭で最低3日分、できれば1週間分の飲料水と食料をそなえるよう呼びかけており、水の目安は1人1日3リットルとされています。乾めん・レトルト・缶詰の賞味期限を確かめ、期限が近いものを9月の食卓で使って買い足せば、備蓄は自然に入れ替わります。行事食の買い物のついでに、常温で置ける食品を1品足しておくのも手です。

9月の行事食を楽しむコツ

すべての行事に手をかける必要はありません。ひとつでも取り入れれば、季節の節目は十分に感じられます。

毎年続けるなら、道具と置き場所を決めてしまうのが早道です。供え物を載せる盆と小皿を1組決めておけば、当日に探す手間がなくなります。飾る場所を窓辺や玄関に固定しておくと、家族も自然に気づきます。並べた食卓を写真に残しておけば、翌年に何を用意したかがすぐ分かります。

日付を家族の予定表に書き入れておくのも効きます。前日に思い出しても手が回らないことがあるので、月のはじめに共有しておくと落ち着いて迎えられます。

旬の食材から入る

行事の由来から入るとハードルが上がります。まずは店頭に並ぶ栗・里芋・秋なすを買うところから始めるほうが続きます。9月に出まわる魚や果物も、そのまま行事の食卓に使えます。

買う量を決めておくと、使い切れずに残ることがありません。里芋は4人分で500gほど、食用菊は1パックで小鉢2〜3人分、秋なすは1人1本を見当にします。行事の前後2〜3日で使い切れる量にしておくと、冷蔵庫の中も詰まりません。

残った素材は、行事のあとの献立に回せます。里芋は皮ごとゆでて冷蔵すれば2〜3日は使えるので、味噌汁や煮物に足せます。栗は甘く煮ておけば、翌日のおやつにも弁当にも使えます。

子どもに由来を伝えるひと工夫

月見団子を一緒に積む、ススキを飾る、栗の皮をむいてもらう。作業に加わってもらうと、由来の話も届きやすくなります。

「なぜススキなのか」「なぜ里芋なのか」を一言添えるだけでも、記憶に残る行事になります。

手伝ってもらう作業は、火や刃物を使わないものを選ぶと任せやすくなります。団子を丸める、供え物を皿に並べる、ススキを花瓶に立てるといった作業なら、小さい子でも最後まで参加できます。日が暮れる前に支度を終えておけば、月が出るころには手が空きます。

9月の行事食は、秋の実りを味わう行事です。栗・里芋・小豆を食卓に出すだけでも、季節の節目は十分に伝わります。

9月の行事食に関するよくある質問

月見団子はいくつ供えるのが正しいですか?

15個とする説と、その年の月の数(平年12個・うるう年13個)とする説があります。どちらも正解とされているので、飾りやすいほうを選んで問題ありません。

おはぎとぼたもちは何が違うのですか?

基本的に同じ食べ物で、食べる季節による呼び分けです。秋の萩の花にちなんで「おはぎ」、春の牡丹の花にちなんで「ぼたもち」と呼びます。

重陽の節句があまり知られていないのはなぜですか?

旧暦の9月9日は現在の10月中旬ごろにあたり、菊が見ごろを迎える時期でした。新暦に移った際に季節感がずれてしまったことが、定着しなかった一因とされています。

十五夜の日付が毎年変わるのはなぜですか?

十五夜は旧暦8月15日にあたる日で、月の満ち欠けを基準にしているためです。新暦では9月中旬から10月上旬の間で毎年動きます。

行事食は必ず手作りしないといけませんか?

その必要はありません。市販の月見団子やおはぎでも意味は変わりません。行事を意識して食卓に並べること自体に価値があります。

食用菊は観賞用の菊で代用できますか?

花屋や園芸店に並ぶ観賞用の菊は、食用として栽培されたものではないため使いません。青果売り場で「食用菊」「もってのほか」などの名前で売られているものを選びます。生の菊が出ていない時期は、乾燥させた食用菊(干し菊)でも同じように使えます。

まとめ|9月の行事食で秋の節目を味わう

9月の行事食を、あらためて整理します。

  • 重陽の節句(9日)……菊酒・栗ごはん・なす料理
  • 十五夜(2026年は25日)……月見団子・里芋
  • 秋のお彼岸(20日〜26日)……おはぎ・精進料理
  • 敬老の日(21日)……決まりはなし。赤飯や縁起物を

共通しているのは、秋の実りへの感謝です。栗も里芋も小豆も、ちょうどこの時期に収穫を迎えます。

前の月の行事食は、こちらにまとめています。

翌月の行事食は、こちらにまとめています。

まずは十五夜の月見団子から。ひとつ取り入れるだけで、9月の食卓は変わります。

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