8月の行事食ガイド|お盆・八朔・立秋の食べ物と由来・意味

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8月の行事食といえば、まず思い浮かぶのはお盆の精進料理ではないでしょうか。ご先祖様を迎えるこの季節には、地域ごとに受け継がれてきた食べ物や、由来のある料理がたくさんあります。

お盆の供え物も、迎えと送りで変える団子も、前の年にどうしたかは案外思い出せないものです。実家と自分の家で並ぶ料理が違い、どちらに合わせればよいのか迷うこともあります。

この記事では、お盆を中心に、八朔(はっさく)や立秋など8月ならではの行事食を、由来や意味とあわせてまとめました。献立の参考にしたい方も、子どもに季節の由来を伝えたい方も、ぜひ読んでみてください。

目次

8月の行事食とは?夏の行事と旬の食べ物カレンダー

8月は、お盆を中心に夏の節目が重なる月です。ご先祖様を供養する行事や、暦の上で秋を迎える立秋など、それぞれに結びついた食べ物があります。まずは8月の主な行事を整理しておきましょう。

八朔とお盆は、月日そのものが決まっている行事です。立秋と処暑は二十四節気にあたり、太陽の動きに合わせて日が定まるため、「8月7日ごろ」のように幅のある言い方になります。

用意する側から見ると、日付が動く立秋と処暑は「そのころ」でかまわない行事、お盆は日付をそろえて支度する行事、と分けて考えると買い物の時期を決めやすくなります。

8月の主な行事一覧(お盆・八朔・立秋・処暑)

8月の代表的な行事と、その時期の目安は次のとおりです。地域によって日付が前後することもあります。

行事時期の目安関連する食べ物
八朔(はっさく)8月1日黒ごま粥・赤飯
立秋8月7日ごろ夏の養生食・旬の野菜
お盆8月13〜16日(地域差あり)精進料理・迎え団子・そうめん
処暑8月23日ごろ旬の魚・夏野菜

お盆は地域によって7月に行うところもありますが、全国的には8月中旬に行う「月遅れ盆」が多く見られます。この記事では8月のお盆を中心にご紹介します。

「行事食」と「旬の食材」の関係

行事食とは、季節の行事に合わせて食べる特別な料理のことです。もともとは、収穫への感謝やご先祖様への供養といった意味を込めて用意されてきました。

そして8月の行事食には、その時期に採れる夏野菜や果物が自然と取り入れられています。旬の食材を知っておくと、行事食もぐっと作りやすくなります。

行事食には、ふだんより手をかけて膳を整えるものと、粥や麺のように簡素にするものがあります。8月でいえばお盆の膳が前者にあたり、一杯の粥や一皿の麺で節目を示す行事が後者にあたります。

どちらも「その日にこれを食べる」と決まっていること自体に意味があり、豪華さは問われません。

行事の意味を知ってから食べると、いつもの料理も特別に感じられますね。

お盆の行事食|精進料理とその由来

8月の行事食の中心となるのが、お盆の精進料理です。精進料理は肉や魚を使わず、豆や野菜、海藻などで作られる料理を指します。ここでは、その由来や代表的な料理を見ていきましょう。

お盆の献立は、新しい料理を覚えなくても形になります。ふだん作っている煮物や和え物から肉と魚、それに動物性のだしを外し、汁物とご飯を添えれば、それで精進の一膳になります。

一方で、器の数や並べ方、供える場所には宗派や地域による違いがあります。菩提寺や家の年長者に確かめられるなら、その作法を優先します。

お盆の精進料理が並んだ食卓のイメージ

精進料理を供える理由と「五辛五葷」

精進料理が供えられるのは、仏教で殺生(せっしょう)を避ける考え方があるためです。動物の命をいただかない料理で、ご先祖様への感謝と供養の気持ちを表します。

また、精進料理では「五辛五葷(ごしんごくん)」と呼ばれる食材を避けるのが伝統です。これは香りや辛味の強い次の5つの野菜を指します。

  • にら
  • ねぎ
  • 玉ねぎ
  • にんにく
  • らっきょう

これらは修行の妨げになると考えられ、精進料理では使わないのが習わしとされています。

ねぎ類が使えないと味が決まらないように思えますが、だしを替えると補えます。精進料理では、かつお節や煮干しのような動物性のものを使わず、昆布と干し椎茸を合わせてだしを取ります。

香りを足したいときは、ごま・しょうが・ゆず・山椒などが使えます。仕上げにすりごまをふる、しょうがを少し効かせるといった程度でも、薄味になりがちな煮物が食べやすくなります。

迎え団子・送り団子(白玉団子)の意味

お盆に供える白玉団子には、それぞれ役割があります。ご先祖様を迎えるときのものを「迎え団子」、送り出すときのものを「送り団子」と呼びます。

迎え団子と送り団子:迎え団子は、旅の疲れを癒やしていただくためにあんこやたれをつけた甘い団子を供えることが多いとされます。送り団子は、お土産として持ち帰ってもらう意味を込め、何もつけない白い団子を供える地域が多いようです。

団子の形や盛り方、数は地域によってさまざまです。決まった正解があるわけではないので、家庭や地域の慣習に合わせて用意すれば問題ありません。

供えるのは、迎え火を焚く13日と、送り火を焚く16日が目安です。地域によっては12日に迎え団子を、15日に送り団子を供える家もあります。

白玉団子は、白玉粉に水を少しずつ加えて耳たぶくらいのかたさにまとめ、丸めて熱湯でゆでます。浮き上がってから1〜2分ほどおいて冷水に取ると、形がくずれにくくなります。

そうめん・天ぷらなどお盆の定番料理

精進料理とあわせて、そうめんもお盆の定番です。そうめんは「ご先祖様が帰るときの荷物を縛る紐」に見立てる説や、細く長く幸せが続くようにという願いを込める説など、諸説あります。

そうめんを供えるときは、ゆでてから置く時間が短いほど扱いやすくなります。供える直前にゆでて水気をよく切り、ひと口ずつ丸めて器に盛ると、下げたあとにそのまま食べられます。

つゆは別の器に添えるか、下げてからかけると麺がのびません。気温の高い時期なので、器ごと日の当たる場所に置かないようにします。

また、野菜の天ぷらもよく供えられます。彩りがよく、精進料理として肉や魚を使わずに用意できるためです。旬の夏野菜を使えば、季節感のある一品になります。

お盆の地域別行事食

お盆の行事食は、地域によって驚くほど個性があります。同じ「お盆の食べ物」でも、東日本と西日本、そして沖縄ではまったく違う料理が並ぶことも珍しくありません。代表的なものを見てみましょう。

違いが生まれた背景には、その土地で確実に手に入るものが選ばれてきたという事情があります。海に近い土地では海藻や魚、山あいでは餅や饅頭というように、供え物は身近な産物と結びついてきました。

同じ県内でも、市町村や家によって並ぶものは変わります。次に挙げる例のうち、材料が手に入るものを一品だけ加える形なら、ふだんの支度の延長で取り入れられます。

東日本(ずんだ餅・天ぷら饅頭 など)

東日本には、地域ならではのお盆料理が数多くあります。北海道では甘納豆を使った赤飯を供える地域があり、宮城県では枝豆をすりつぶした「ずんだ餅」が親しまれています。

長野県の一部には、饅頭を天ぷらにした「天ぷら饅頭」という珍しい行事食も伝わっています。甘い饅頭を揚げるという意外な組み合わせですが、地域では夏の風物詩として根づいています。

北海道の甘納豆赤飯は、小豆の代わりに甘納豆を使い、食紅で米を色づけて炊くのが特徴です。小豆を煮てゆで汁を取る工程がないので、思い立った日にも炊けます。

ずんだ餅は、枝豆をゆでてさやから出し、薄皮をむいてからすりつぶします。手間がかかるのはこの下ごしらえなので、前日にあんを作って冷やしておけば、当日は餅と合わせるだけで済みます。

西日本・沖縄(アラメの煮物・ゴーヤー料理 など)

西日本にも特色ある行事食があります。京都では海藻の「アラメの煮物」を供える風習が知られ、鹿児島では夏野菜や大豆をたっぷり入れた汁物が作られる地域もあります。

沖縄のお盆(旧盆)は特に独特で、ゴーヤーを使った料理などが食卓に並びます。地域の気候や特産物が、そのまま行事食に反映されているのが面白いところです。

アラメは乾物として売られているので、水で戻してから油揚げなどと煮ます。買い置きがきくため、来客が続いて買い物に出られない日でも一品用意できます。

沖縄の旧盆は旧暦の日付で行うため、新暦では8月下旬から9月にずれる年もあります。親族が集まる日を決めるときは、その年の旧盆の日付から逆算することになります。

実家のお盆料理を思い出すと、地域ごとの違いがよく分かりますね。

お盆以外の8月の行事食

8月の行事食はお盆だけではありません。月の始まりの「八朔」や、暦の上で秋を迎える「立秋」「処暑」にも、季節を感じる食べ物があります。あまり知られていない行事食も見ていきましょう。

これらはお盆ほど支度のいる行事ではありません。粥を一杯炊く、旬のものを一品足すという程度で、季節の節目としては十分に形になります。

八朔はもともと旧暦8月1日の行事で、京都の花街のように新暦の8月1日に行う例もあります。立秋と処暑は、暑さの盛りと、その暑さがやわらぐころという季節の区切りを示す日です。

八朔(8月1日)と黒ごま粥の由来

八朔とは旧暦8月1日のことで、収穫期を前にした節目の行事でした。もともとは「八朔の祝い」として、疫病除けを願う風習があったと伝えられています。

かつてはススキの穂を焼いて粥に混ぜた「尾花粥(おばながゆ)」を食べていましたが、江戸時代に民間へ広まる中で、黒ごまを使った「黒ごま粥」へと変わっていったとされています。今では珍しい行事食ですが、季節の節目を意識するきっかけになります。

八朔は「田の実(たのみ)の節句」とも呼ばれ、その年の実りを祈る日でした。「田の実」が「頼み」と同じ音であることから、日ごろ世話になっている相手へ贈り物をする習わしも生まれています。

京都の祇園では、芸妓や舞妓が黒紋付の正装でお茶屋や師匠宅へ挨拶にまわる行事として、今も8月1日に続いています。

立秋・処暑と夏の養生食

立秋は8月7日ごろで、暦の上では秋の始まりです。とはいえ実際にはまだ暑い盛りなので、体をいたわる食事が大切になります。

この時期は、水分の多い夏野菜や、さっぱりと食べられる旬の食材が体になじみます。処暑(8月23日ごろ)になると少しずつ暑さがやわらぐとされ、夏の疲れを整える食事が向く時期です。

立秋を過ぎると、手紙やはがきの挨拶は「暑中見舞い」から「残暑見舞い」に変わります。暦の上の区切りは、食卓よりも先に言葉づかいのほうに表れます。

処暑のころは朝晩の気温が下がり始めるので、冷たい麺や生野菜に偏っていた献立に、汁物や煮物を少しずつ戻していく目安になります。

立秋以降に取り入れたい旬の食材:なす・かぼちゃ・オクラといった夏野菜のほか、桃やぶどうなどの果物もこの時期においしくなります。水分やミネラルを含む食材を上手に取り入れて、夏の終わりを健やかに過ごしましょう。

8月の行事食を楽しむコツ

8月の行事食は、難しく考えなくても大丈夫です。旬の食材を取り入れたり、由来を家族で話したりするだけで、季節の節目がぐっと豊かになります。無理なく楽しむコツをご紹介します。

8月でつまずきやすいのは、料理そのものより日程の重なりです。帰省で人数が増える日と家族だけの日が同じ週に混ざり、しかも一年でも気温の高い時期にお供えを扱います。

人が集まる日は、供える一品だけを家で作り、残りは持ち寄りや買ってきたもので補うと台所が詰まりません。送り火を焚く16日は片づけと重なるので、作る品数は前日までに絞り込んでおきます。

旬の食材を取り入れる(夏野菜・魚・果物)

行事食を作るときは、8月が旬の食材を選ぶと、味も彩りもよくなります。夏野菜の天ぷらや、旬の魚を使った一品を添えるだけで、季節感のある食卓になります。

買う前に決めておくと迷わないのが、調理法の割り振りです。揚げるものを一つ、煮るものを一つ、和えるものを一つ選べば、精進の献立でも品数がそろいます。なすは揚げても煮ても使え、かぼちゃは煮物、オクラはさっとゆでて和え物にすると役割が重なりません。

天ぷらの衣は、卵を使わずに小麦粉と冷水だけでも作れます。魚や肉を使わない日でも、揚げ物が一品あると食卓の見栄えが整います。

何を選べばよいか迷ったときは、旬の食材ガイドが参考になります。買い物や献立づくりに役立ててみてください。

子どもに由来を伝えるひと工夫

行事食は、子どもに季節の文化を伝えるよい機会です。「この団子はご先祖様をお迎えするためのものだよ」と一言そえるだけで、食事の時間がちょっとした学びになります。

一緒に白玉団子を丸めたり、地域ごとの料理の違いを話したりするのもおすすめです。手を動かしながら由来を知ると、記憶にも残りやすくなります。

帰省先では、同じお盆でも供えるものが家ごとに違います。祖父母に「この家では何を供えるの」と子どもから聞いてもらうと、地域による違いが実感として残ります。

団子に何をつけるか、そうめんをどう盛るかも家によって差があります。違いに気づいたら「どうしてうちと違うんだろうね」と返すだけで、会話が続きます。

由来を一緒に調べながら作ると、子どもも興味を持ってくれますよ。

よくある質問

お盆の精進料理で避ける食材はありますか?

肉や魚に加えて、「五辛五葷」と呼ばれるにら・ねぎ・玉ねぎ・にんにく・らっきょうを避けるのが伝統です。香りや辛味の強い野菜が対象とされています。

迎え団子と送り団子はどう違いますか?

ご先祖様を迎えるときの団子を迎え団子、送り出すときの団子を送り団子と呼びます。迎え団子は甘い味つけ、送り団子は白い団子を供える地域が多いとされますが、形や盛り方は地域によってさまざまです。

お盆にそうめんを食べるのはなぜですか?

諸説ありますが、ご先祖様が荷物を縛る紐に見立てる説や、細く長く幸せが続くようにと願う説などが知られています。夏に食べやすい料理であることも、定番になった理由の一つと考えられます。

お盆に供えた精進料理や団子は、いつ下げればよいですか?

湯気が立たなくなり、料理が冷めたころが下げる目安です。8月は傷みが早いので、供えたままにする時間を長く取らず、下げたものは「お下がり」として家族で分けていただきます。汁気の多いものや冷たい料理ほど、早めに下げるほうが安心です。

八朔の黒ごま粥は家庭でも作れますか?

米1に対して水5倍ほどで粥を炊き、仕上げに黒すりごまを混ぜれば形になります。塩をほんの少し加えると、ごまの香りが立ちます。炊いたご飯から作る場合も、水を足して煮てからごまを混ぜれば同じように仕上がります。

まとめ|8月の行事食で夏の節目を味わう

8月の行事食は、お盆の精進料理を中心に、地域や暦に根ざした多彩な食べ物が受け継がれてきました。八朔や立秋など、あまり知られていない行事にも季節を感じる食べ物があります。

最後に、この記事で触れた要点を整理します。

  • 精進料理では肉と魚のほか五辛五葷を避け、だしも昆布と干し椎茸に替える
  • 迎え団子は迎え火の日、送り団子は送り火の日に供えるのが目安
  • そうめんや野菜の天ぷらは、肉と魚を使わずに整えられるお盆の定番
  • 地域ごとの行事食は、実家や土地で受け継がれてきたやり方に合わせてよい
  • 八朔の粥や、立秋・処暑のころの一品は、少ない手間でも節目になる

お盆には精進料理や迎え団子、そうめんを。地域ごとの料理や、八朔・立秋の食べ物も取り入れて、旬の食材とともに8月の節目を味わってみてください。

由来を知って食べる行事食は、いつもの食事とは違った味わいがあります。ぜひ今年の8月は、季節の食べ物とともに夏の節目を楽しんでみてはいかがでしょうか。

前後の月の行事食もまとめています。7月は七夕と土用の丑の日、9月は重陽の節句や十五夜が続きます。

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