コロッケは食べたいけれど、たっぷりの油を用意して、はねを気にしながら揚げて、最後に残った油を処理する——この一連の手間を考えると、つい後回しになりませんか。おまけに揚げ物は失敗すると爆発してしまうこともあり、ハードルが高い料理です。
そこで役に立つのが「揚げないコロッケ」です。結論からいうと、パン粉を先にフライパンで炒ってきつね色にしておき、それを成形したタネにまとわせるのが基本。衣に火を通す工程が不要になるので、油は大さじ数杯で足ります。この記事では基本の作り方に加えて、トースター・オーブン・レンジといった器具別の仕上がりの違い、サクサクにするコツ、うまくいかなかったときの立て直し方まで整理しました。
揚げないコロッケとは?揚げるコロッケとの違い
揚げないコロッケとは、その名のとおり油で揚げる工程を省いたコロッケのことです。ポイントは順番を入れ替えるところにあります。通常は「衣をつけてから油で色をつける」のに対し、揚げないコロッケは「先に色をつけたパン粉を、あとからまとわせる」という発想で作ります。
コロッケのタネはじゃがいもと炒めた具なので、そもそも中身はすべて加熱済みです。揚げる工程が担っているのは、実質的に「パン粉に色と香りをつけること」だけ。ならばパン粉だけ別に炒ってしまえばいい、というわけです。
揚げないコロッケの成否は、ほぼ「パン粉をどこまできれいに色づけられるか」で決まります。ここさえ押さえれば、あとの工程はむずかしくありません。
揚げる場合との比較
両者の違いを並べると、得られるものと引き換えに手放すものがはっきりします。
| 項目 | 揚げないコロッケ | 揚げるコロッケ |
|---|---|---|
| 使う油 | 大さじ2〜3(パン粉を炒る分) | 鍋に3〜4cm(500ml前後) |
| 後片付け | フライパンを洗うだけ | 油の粗熱取り・こす・処理が必要 |
| 食感 | 表面はサクサク、衣は薄め | 衣がふくらみ厚みが出る |
| 破裂の心配 | ほぼなし | タネの水分が多いと爆発しやすい |
| コク | あっさりめ | 油を吸う分こってり |
| 加熱時間 | パン粉3〜5分+仕上げ5分前後 | 1回3〜4分を数回に分けて |
揚げないコロッケは、衣が油を吸わないぶん軽い仕上がりになります。逆にいえば、揚げたてのあのジュワッとしたコクは出せません。「別物として軽さを楽しむ料理」と考えたほうが、期待とのずれが少なくて済みます。
向いている具材・向いていない具材
揚げない方式は、中身に火が通っている必要があります。この一点で向き不向きが分かれます。
- 向いている:じゃがいも+ひき肉の定番、かぼちゃ、さつまいも、おから、コーンクリーム風、カレー味などの練り物系タネ
- やや工夫が必要:クリームコロッケ(ホワイトソースがゆるいと形が保てないため、しっかり冷やして固める)
- 向いていない:メンチカツのような生肉を包むタイプ(中心まで加熱する必要があり、揚げないと火の通りが読みにくい)
生の肉や魚をタネに使う場合は、包む前にしっかり加熱しておきましょう。そうすれば揚げない方式でも問題なく作れます。
揚げないコロッケの基本の作り方【フライパン+炒りパン粉】
まずは、いちばん失敗が少ないフライパン方式を紹介します。特別な道具はいりません。フライパン1つとボウルがあれば作れます。

材料(4〜6個分)
- じゃがいも……400g(中3個ほど。男爵・キタアカリなどほくほく系)
- 合いびき肉……100g
- 玉ねぎ……1/2個(みじん切り)
- 塩・こしょう……各少々
- バターまたはサラダ油……小さじ2(炒め用)
- パン粉……1カップ(40g前後・乾燥パン粉)
- サラダ油……大さじ2(パン粉を炒る用)
- 小麦粉……大さじ3/溶き卵……1個分(衣の接着用)
じゃがいもは、ほくほくと崩れる男爵系がコロッケ向きです。煮崩れしにくいメークインは形が残りやすく、なめらかなタネになりにくいので、使うならしっかりつぶしてください。
手順
皮をむいて2cm角に切り、耐熱容器に入れてふんわりラップをかけます。600Wの電子レンジで6〜8分が目安。竹串がすっと通ったら、熱いうちにフォークやマッシャーでつぶします。冷めると粘りが出てつぶしにくくなるので、加熱直後に手早く。
フライパンにバターを溶かし、玉ねぎのみじん切りを透き通るまで炒めます。ひき肉を加えて色が変わるまで炒め、塩こしょうで下味を。ここで汁気がなくなるまで炒めるのが重要です。水分が残っているとタネがゆるみ、成形しづらくなります。
つぶしたじゃがいもと炒めた具を混ぜ合わせ、味をみて足りなければ塩を足します。バットに広げて粗熱を取り、可能なら冷蔵庫で20〜30分冷やしてください。冷えたタネはまとまりがよく、成形が驚くほど楽になります。
きれいなフライパンにサラダ油大さじ2とパン粉を入れ、火をつける前に菜箸で混ぜて油をなじませます。中火にかけ、絶えず混ぜながら3〜5分。全体がきつね色になったらすぐ皿に移してください。フライパンに残したままだと余熱で焦げます。
タネを小判形に成形し、小麦粉→溶き卵の順にくぐらせ、炒めたパン粉をしっかり押しつけます。このままでも食べられますが、トースターで3〜4分温めると衣が落ち着き、香ばしさが増します。
玉ねぎのみじん切りで涙が出るのが苦手な方は、切り方と下ごしらえを変えるだけでかなり軽減できます。

加熱器具別の作り方を比較【トースター・オーブン・レンジ】
揚げないコロッケは、仕上げに使う器具で食感と手間がかなり変わります。どれが正解ということはなく、作る個数と求める食感で選ぶのがおすすめです。
| 器具 | 加熱の目安 | 仕上がり | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| フライパン(炒りパン粉) | パン粉3〜5分 | サクサク。もっとも失敗が少ない | 少人数・初めて作るとき |
| トースター | 1000W前後で5〜7分 | 表面が乾いてカリッとする | 2〜4個をまとめて |
| オーブン | 200℃で10〜15分 | 全体が均一に香ばしい | 6個以上の作り置き |
| 電子レンジ | 600Wで1〜2分 | やわらかめ。衣は炒りパン粉頼み | 時間がないとき・温め直し |
| スコップコロッケ | トースター5分前後 | ほろほろ。成形なしで手軽 | 大皿でまとめて出すとき |
トースターで焼く
成形して衣をつけたコロッケを、アルミホイルを敷いた天板に並べて焼きます。1000W前後なら5〜7分が目安。すでに色づいたパン粉を使っているので、焼き色を待つ必要はありません。表面の水分を飛ばして食感を立たせるのが目的だと考えてください。
焦げそうならアルミホイルを上からふんわりかぶせます。機種によって火力の差が大きいので、初回は4分で一度様子を見ると安心です。
オーブンで焼く
まとめて作るならオーブンが便利です。200℃に予熱し、クッキングシートを敷いた天板に並べて10〜15分。庫内全体が同じ温度になるため、個数が多くても仕上がりがそろいます。
オーブンを使う場合は、パン粉を炒らずに油をまぶしただけの状態から焼く方法もあります。ただし色づきにムラが出やすいので、確実にきれいな焼き色をつけたいなら先に炒っておくほうが安全です。
電子レンジだけで済ませる
いちばん手軽なのがレンジ方式です。タネはすでに加熱済みなので、成形して炒りパン粉をまぶした時点で完成といっても差し支えありません。温かくして食べたいときだけ、600Wで1〜2分ほど温めます。
成形しない「スコップコロッケ」
成形と衣づけをまるごと省いてしまう方法もあります。耐熱皿にタネを平らに敷き詰め、上から炒ったパン粉をたっぷりのせて、トースターで5分ほど温めるだけ。スプーンですくって取り分けるので「スコップコロッケ」と呼ばれます。
小麦粉も卵も使わないため、洗い物が最小限で済みます。時間がない日や、大人数に出すときの現実的な選択肢です。
サクサクに仕上げる5つのコツ
揚げないコロッケが「なんだか物足りない」となる原因は、だいたい決まっています。次の5点を押さえるだけで、仕上がりがはっきり変わります。

コツ1|パン粉は火をつける前に油となじませる
熱したフライパンに油を入れてからパン粉を加えると、最初に触れた部分だけが一気に色づいてムラになります。冷たいフライパンに油とパン粉を同時に入れ、混ぜてから加熱するのが正解です。全体に油が回った状態で温度が上がるので、色づきがそろいます。
油の量はパン粉1カップに対して大さじ2が目安。少なすぎるとパサつき、多すぎると重くなります。
コツ2|タネの水分を徹底的に飛ばす
揚げないコロッケは、揚げ油による脱水がありません。つまりタネの水分は最後まで残ります。玉ねぎとひき肉を炒める段階で、フライパンの底に汁気がたまらない状態まで炒めきってください。
じゃがいもをゆでる場合も同じです。水気が多いと感じたら、つぶす前に鍋を弱火にかけて粉ふきいもの要領で水分を飛ばすと、ほくほくのタネになります。
コツ3|粗熱を取ってから成形する
熱いままのタネは水蒸気を含んでいて、成形してもすぐにゆるんできます。バットに広げて粗熱を取り、冷蔵庫で20〜30分休ませるのが理想です。冷えるとでんぷんが落ち着き、手にくっつきにくくなります。
コツ4|衣は「粉→卵」を省かない
手軽さを求めて小麦粉と卵を飛ばすと、パン粉が皿の上でぱらぱらと落ちてしまいます。薄く小麦粉をはたき、溶き卵にくぐらせるひと手間が、衣を留める接着剤の役割を果たします。
- 小麦粉大さじ3+水大さじ2を混ぜた「バッター液」でくぐらせる
- マヨネーズを薄くぬってからパン粉をつける(油分が接着を助ける)
- 成形時に表面を軽く湿らせ、パン粉を手のひらで押しつける
コツ5|パン粉は押しつけて密着させる
バットに広げたパン粉の上でタネを転がすだけでは、衣が薄くつくだけです。上からも手のひらでしっかり押さえて、面ごとに密着させましょう。揚げないぶん衣が固定されにくいので、この作業が食感を左右します。
「パン粉に油をなじませてから炒る」「タネの水分を飛ばす」「冷やしてから成形する」——この3つだけでも、仕上がりは大きく変わります。
よくある失敗と対処法
うまくいかなかったときも、たいていは途中から立て直せます。症状ごとに原因と手当てを整理しました。
パン粉が色づかない・逆に焦げる
色づかない原因は火力不足か、油が足りていないかのどちらかです。弱火でじりじり炒めても水分が抜けるだけで、香ばしさは出ません。中火を保ち、混ぜ続けてください。
逆に焦げるのは、色づき始めてからの進行が速いためです。パン粉は薄いきつね色になった瞬間から一気に濃くなります。好みの色より少し手前で火から下ろすと、余熱でちょうどよく仕上がります。焦げた場合は残念ながら苦味が消えないので、作り直すほうが早いです。
衣がはがれる・皿にパン粉が落ちる
小麦粉と卵の工程を省いたか、押しつけが弱いかが原因です。すでに衣をつけたあとで気づいたなら、溶き卵を刷毛で薄くぬり、その上からパン粉を足して押さえ直せば持ち直します。
タネの表面が乾いていると粉がのりません。冷蔵庫で長く冷やしすぎた場合は、成形時に手を軽く湿らせて表面をならしてから粉をつけましょう。
タネが崩れる・べちゃっとする
水分過多のサインです。応急処置として、パン粉を大さじ1〜2そのままタネに混ぜ込むと余分な水分を吸ってまとまります。それでもゆるいときは、片栗粉を小さじ1加えてください。
そもそも成形できないほどゆるいなら、無理をせずスコップコロッケに切り替えるのが現実的です。耐熱皿に敷いて炒りパン粉をのせれば、同じ味で問題なく成立します。
揚げたてのようなコクが足りない
これは方式の性質上どうしても出る差です。油を吸っていない以上、揚げ物と同じこってり感にはなりません。近づけたいなら、次のような足し算が有効です。
- パン粉を炒る油をサラダ油からバターやオリーブオイルに変える
- 炒りパン粉に粉チーズを大さじ1混ぜて、うまみと香りを足す
- タネの具にベーコンやコーンを加えて、油分と甘みを補う
- ソースを濃いめのものにして、味の輪郭をはっきりさせる
とはいえ、軽さこそが揚げないコロッケの持ち味でもあります。揚げ物に寄せすぎず、別の料理として献立に組み込むほうが満足度は高くなります。
付け合わせに迷ったら、揚げ物の献立でよく使われる副菜がそのまま流用できます。さっぱりした一品を合わせると、全体のバランスが整いますよ。

作り置き・冷凍保存と温め直し
揚げないコロッケは、まとめて作って保存しておくと平日の食卓がぐっと楽になります。保存は「タネの状態」と「衣をつけた状態」のどちらでも可能ですが、扱い方が少し変わります。
| 保存する状態 | 方法 | 日持ちの目安 | 使うとき |
|---|---|---|---|
| タネのみ(冷蔵) | 密閉容器に入れる | 2日程度 | 成形して衣をつける |
| タネのみ(冷凍) | 1食分ずつラップで包む | 約3〜4週間 | 冷蔵庫で解凍してから成形 |
| 成形済み・衣なし(冷凍) | 間隔をあけて並べ冷凍後に袋へ | 約3〜4週間 | 凍ったまま衣づけ |
| 衣つき・加熱済み(冷凍) | 1個ずつラップ+保存袋 | 約2〜3週間 | トースターで温め直す |
日持ちはあくまで家庭での目安です。冷凍庫の開け閉めが多い環境では品質の低下が早まるので、早めに使い切りましょう。
温め直しはトースターが基本
冷蔵・冷凍したコロッケを温め直すときは、電子レンジで中まで温めてから、仕上げにトースターで2〜3分あぶるのが失敗しない手順です。レンジだけだと衣がしっとりし、トースターだけだと中心が冷たいままになりがちです。
そもそも主役のじゃがいもは、冷凍の仕方によって食感が大きく変わる食材です。まとめ買いしたときの保存方法は、こちらにパターン別でまとめています。

揚げないコロッケに関するよくある質問
- パン粉は生パン粉と乾燥パン粉のどちらがいいですか?
-
扱いやすいのは乾燥パン粉です。水分が少ないぶん短時間で均一に色づき、焦がす失敗が起きにくくなります。生パン粉はふんわりした食感が出せますが、水分が多く炒る時間が長くなるため、慣れてから試すのがおすすめです。
- 揚げないコロッケは油を使わずに作れますか?
-
完全に油なしにすると、パン粉が乾いてパサつき、色づきもムラになります。パン粉1カップに大さじ2程度の油は必要と考えてください。揚げる場合に使う油は500ml前後なので、それでも使用量は大幅に少なくなります。
- パン粉を炒る作業は電子レンジでもできますか?
-
できます。耐熱皿にパン粉と油を広げ、600Wで1分加熱して混ぜる、という作業を色づくまで数回くり返します。ただし加熱ムラが出やすく、一部だけ焦げることがあるため、こまめに混ぜて様子を見てください。フライパンのほうが色を調整しやすいです。
- クリームコロッケも揚げずに作れますか?
-
作れますが、ホワイトソースがゆるいと形が保てません。ソースはしっかり煮詰めて、バットに広げて冷蔵庫で数時間冷やし固めてから成形してください。それでも崩れやすい場合は、耐熱皿に敷いて炒りパン粉をのせるスコップ方式にすると失敗がありません。
- お弁当に入れても大丈夫ですか?
-
問題ありません。むしろ油が少ないぶん、時間がたっても油っぽくなりにくいという利点があります。入れる際は必ず中心まで温め直し、しっかり冷ましてから詰めてください。温かいまま蓋をすると水蒸気がこもり、衣がしっとりしてしまいます。
まとめ|パン粉を先に炒れば、コロッケは揚げなくていい
揚げないコロッケの要点を、あらためて整理します。
揚げる工程の役割は「パン粉に色と香りをつけること」。そこだけ先に済ませてしまえば、大量の油はいりません。
- パン粉は冷たいフライパンに油と一緒に入れ、混ぜてから中火で3〜5分炒る
- タネは汁気がなくなるまで炒め、冷やしてから成形すると崩れにくい
- 小麦粉→卵の接着工程は省かず、パン粉は手のひらで押しつける
- 仕上げはトースター5〜7分、オーブンなら200℃で10〜15分が目安
- 成形が面倒な日は、皿に敷いてパン粉をのせるスコップ方式でも十分おいしい
揚げ物のハードルが下がると、献立の選択肢は一気に広がります。定番メニューの作り方をひととおり押さえておきたい方は、こちらもあわせてどうぞ。

油の処理から解放されると、コロッケは「特別な日の料理」から「思い立った日の料理」に変わります。まずはパン粉を炒るところから、気軽に試してみてください。
