名古屋名物のどて煮を家で作りたいけれど、味噌の配合や下処理で失敗しそう、と感じていませんか。赤味噌と豚もつ(または牛すじ)さえ揃えば、特別な技術がなくても本格的などて煮は作れます。
どて煮の決め手は「赤味噌の黄金比」と「もつ・牛すじの下処理」の2点だけ。この2つを押さえれば、居酒屋の味が家庭の鍋で再現できます。
この記事では、豚もつ版と牛すじ版の両方のレシピに加えて、圧力鍋ありなしの作り方、もつ煮やどて焼きとの違い、アレンジ・保存方法までまとめました。味噌の選び方や代用案も紹介するので、八丁味噌がない地域の方でも安心して作れます。

どて煮とは?名古屋名物の赤味噌煮込みの特徴
どて煮は、豚のもつや牛すじを赤味噌でじっくり煮込んだ、愛知県・名古屋の郷土料理です。こってりとした甘辛い味噌の香りが食欲をそそり、ごはんにもお酒にもよく合います。
どて煮の基本(八丁味噌・豚もつ・牛すじ)
どて煮の主役となる味噌は、愛知県岡崎市八帖町発祥の「八丁味噌」をはじめとする豆味噌や赤味噌です。大豆のうま味が濃縮された濃厚なコクと、わずかな酸味・渋みが、もつや牛すじの独特な香りをおいしさに変えてくれます。
具材は豚の白もつ(小腸・大腸)が定番ですが、牛すじを使うレシピも広く親しまれています。こんにゃく、大根、ごぼう、ゆで卵などを一緒に煮込むのが一般的です。
もつ煮・どて焼きとの違い
「もつ煮」「どて焼き」との違いが分かりにくいという声はよく聞かれます。ざっくり整理すると、次のようになります。
| 料理名 | 主な具材 | 使う味噌 | 地域 |
|---|---|---|---|
| どて煮 | 豚もつ・牛すじ・こんにゃく・大根など | 赤味噌・豆味噌(八丁味噌) | 愛知・名古屋 |
| どて焼き | 牛すじ串が中心 | 白味噌主体(甘め) | 大阪 |
| もつ煮 | 牛・豚・鶏・馬などのもつ | 味噌または醤油(地域差あり) | 全国(関東は醤油味が多い) |
もつ煮は広い意味での総称なので、どて煮もどて焼きも「もつ煮の一種」と位置づけられます。どて煮とどて焼きの最大の違いは、使う味噌の種類と具材の多彩さです。
どて煮の由来と歴史
どて煮の由来には諸説ありますが、大阪の「どて焼き」が名古屋に伝わって独自進化したという説が有力です。鍋のふちに味噌を土手のように塗りつけて、中で具材を煮込んだ調理法が「どて」の語源とされています。
農林水産省の「うちの郷土料理」でも、愛知県の煮味噌文化の代表格として紹介されており、家庭料理としても屋台料理としても長く親しまれてきました。
どて煮の基本レシピ|赤味噌の黄金比
どて煮の味を決めるのは、赤味噌・みりん・砂糖・酒の配合バランスです。ここでは4人分を想定した基本の黄金比を紹介します。この比率さえ覚えておけば、豚もつでも牛すじでも応用が効きます。
材料(4人分)と調味料の配合
基本となる材料と調味料の目安は次のとおりです。
| 種類 | 材料 | 分量 |
|---|---|---|
| メインの具材 | 豚もつ または 牛すじ | 400g |
| 副材料 | こんにゃく | 1枚(約250g) |
| 副材料 | 大根 | 1/3本(約300g) |
| 副材料 | ゆで卵 | 4個 |
| 香味 | しょうが(薄切り) | 1かけ |
| だし | 水 | 800ml |
| 調味料 | 赤味噌(八丁味噌) | 大さじ4 |
| 調味料 | みりん | 大さじ4 |
| 調味料 | 砂糖 | 大さじ2〜3 |
| 調味料 | 酒 | 大さじ2 |
赤味噌:みりん=1:1がベース。ここに砂糖を半量〜同量で加えると、名古屋らしい甘辛い味に近づきます。甘さ控えめが好みなら砂糖は大さじ1から調整してください。
味噌の選び方(八丁味噌/赤味噌/代用)
一番おいしく仕上がるのは、やはり八丁味噌などの豆味噌です。濃厚なコクと少しの渋みがもつの臭みを包み込み、深い味わいを作ります。
スーパーで手に入りやすい「赤だし味噌」や「合わせ赤味噌」でも十分おいしく作れます。八丁味噌が手に入らないときは、次のような代用でも近い風味になります。
- 赤だし味噌のみ(大さじ4)→ やや甘めでマイルドな仕上がり
- 合わせ味噌+白味噌少々(大さじ4+大さじ1)→ 関西風のまろやかさ
- 普通の味噌+醤油少々(大さじ3+小さじ1)→ コクが加わりしっかり味に
味の決め手は「みりん・砂糖」のバランス
どて煮の「甘辛さ」は、みりんと砂糖の配分で大きく変わります。みりんはコクと照りを、砂糖ははっきりした甘さを出す役割です。
みりん多めにすると上品で和食寄りの仕上がりになり、砂糖多めにすると屋台風のパンチのある味になります。好みの配分を探すのも、どて煮作りの楽しみのひとつです。

豚もつで作るどて煮の作り方
豚もつのどて煮は、脂のうま味とプリッとした食感が特徴です。臭みを抜くための下処理さえ丁寧に行えば、驚くほど上品な仕上がりになります。

豚もつの下処理(臭み抜き)
豚もつは下処理で味が決まると言っても過言ではありません。次の手順で丁寧に下茹でしましょう。
鍋にたっぷりの湯を沸かし、豚もつを入れて3〜4分ゆでます。アクと余分な脂が浮いてきます。
ゆでたもつをザルに上げ、流水で表面のぬめりと脂をしっかり洗い流します。
気になる場合はもう一度同じ手順を繰り返すと、臭みがほぼなくなります。食べやすい大きさに切っておきます。
手順(鍋でじっくり煮る基本版)
下処理を終えた豚もつを使って、基本の煮込み手順を紹介します。所要時間は約2時間ですが、ほとんどが煮込み時間です。
- 鍋に下処理した豚もつ、食べやすく切ったこんにゃく、しょうがの薄切り、水800mlを入れて強火にかける
- 煮立ったらアクをすくい、弱火にして30分煮る
- 大根を加えてさらに20分煮る
- 赤味噌(大さじ2)、みりん、砂糖、酒を加えて溶き、弱火で30分煮込む
- ゆで卵と残りの赤味噌(大さじ2)を加え、さらに30分ほど煮含める
- 火を止めて粗熱を取り、一度冷ますと味がしっかり染み込む
圧力鍋で時短する方法
時間を短縮したいときは、圧力鍋が強い味方になります。下処理までは同じですが、煮込み工程を大幅に短縮できます。
- 下処理した豚もつ、こんにゃく、大根、しょうが、水を圧力鍋に入れる
- 調味料を半量加えて蓋をし、加圧15分
- 圧力が抜けたら蓋を開け、残りの調味料とゆで卵を加えて弱火で20分煮詰める
圧力鍋を使うと、通常2時間以上かかる煮込みが1時間以内で完成します。ただし、味を染み込ませるには一度冷ます工程が重要なので、食べる2〜3時間前に作っておくのがおすすめです。
牛すじで作るどて煮の作り方
牛すじのどて煮は、とろけるような食感とコラーゲンのぷるぷる感が魅力です。豚もつよりも下処理がやや大変ですが、その分達成感のある仕上がりになります。
牛すじの下処理(茹でこぼし2回・脂処理)
牛すじは独特のくさみと大量の脂があるため、下処理を省くと油っぽくなってしまいます。次の手順で丁寧に処理しましょう。
鍋に牛すじと水を入れて中火にかけ、沸騰してから1分ほど煮ます。お湯を捨て、水にさらしてアクと脂を洗い流します。
同じ手順をもう一度繰り返します。これで臭みがほぼ抜けます。
表面に残った白い脂の塊は、冷めてから包丁で削ぎ落とすと効率的です。一口大に切り分けておきます。

牛すじは下処理が8割。ここを丁寧にやるかどうかで、仕上がりが全く違ってきます。
手順(こんにゃく・大根と合わせる)
下処理した牛すじを使い、こんにゃくと大根を合わせて煮込みます。豚もつ版よりも煮込み時間がやや長めです。
- 鍋に下処理した牛すじ、こんにゃく、大根、しょうがの薄切り、水1リットルを入れて強火にかける
- 煮立ったらアクをすくい、弱火で1時間半ほど煮る(牛すじが柔らかくなるまで)
- 赤味噌、みりん、砂糖、酒を加えて、さらに30分弱火で煮込む
- ゆで卵を加えて10分煮含め、火を止めて冷ます
圧力鍋なら加圧20分でとろとろ
牛すじは圧力鍋との相性がとても良く、鍋でじっくり煮るよりも短時間でとろとろの食感になります。
- 下処理した牛すじ、しょうが、水を圧力鍋に入れて加圧20分
- 圧力を自然に抜き、こんにゃくと大根、調味料を加えて通常の鍋で30分煮込む
- 仕上げにゆで卵を加えて味を染み込ませる
豚もつと牛すじ、どちらを選ぶかで食感と手間が変わります。プリッとした歯ごたえ重視なら豚もつ、とろける柔らかさ重視なら牛すじがおすすめです。
どて煮をもっと美味しく作るコツ
基本のレシピに慣れてきたら、もうひと工夫で味の完成度が上がります。プロの料理人も実践している、家庭でも真似しやすいコツを紹介します。
一晩寝かせて味を染み込ませる
どて煮は、煮込んだ直後よりも一度冷まして再加熱したほうが格段においしくなります。冷める過程で味が具材の中まで染み込むためです。
可能であれば、食べる前日に作って冷蔵庫で一晩寝かせましょう。翌日温め直すと、味噌の角が取れてまろやかな深みのある味わいになります。
こんにゃく・大根・ごぼうのおすすめの切り方
副材料の切り方は、味の染み込み方と食感に直結します。それぞれのおすすめの切り方は次のとおりです。
- こんにゃく:手でちぎる、または格子状に切り込みを入れて一口大にカット
- 大根:厚さ1.5〜2cmのいちょう切り。面取りすると煮崩れしにくい
- ごぼう:乱切りにして水にさらしアクを抜く
仕上げの薬味(刻みネギ・七味)
器に盛ってから、刻みネギをたっぷり散らし、七味唐辛子を振るのが名古屋流です。白味噌のおでんに山椒をかけるのと同じく、薬味が味のアクセントになります。
お好みで練り辛子やゆず胡椒を添えるのもおすすめです。濃厚な味噌の風味に、爽やかな香りがよく合います。
余ったどて煮のアレンジ・保存方法
どて煮は一度にたくさん作るほうが味が深くなる料理です。余っても、アレンジすれば最後までおいしく食べきれます。
どてめし・うどん・豆腐にかける
余ったどて煮の定番アレンジが「どてめし」です。温かいごはんの上にどて煮をたっぷりかけ、刻みネギをのせるだけで、名古屋めしの人気メニューが完成します。
他にもおすすめのアレンジは次のとおりです。
- うどんにかけて味噌煮込みうどん風
- 冷奴の上にかけてピリ辛豆腐
- 卵とじにして丼ぶり
- コロッケやトーストに乗せてリメイク
冷蔵・冷凍保存の目安
保存期間の目安は次のとおりです。必ず清潔な容器を使い、粗熱を取ってから保存してください。
| 保存方法 | 期間の目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 冷蔵 | 3〜4日 | 密閉容器に入れ、1日1回火を通すと日持ちしやすい |
| 冷凍 | 約1か月 | 小分けにして冷凍。こんにゃくは食感が変わるので取り除く |
温め直しのコツ
冷蔵保存のどて煮を温め直すときは、鍋に移して弱火でじっくり温めるのがベストです。電子レンジを使う場合は、ラップをふんわりかけて短時間ずつ温め、途中で混ぜてムラを防ぎます。
温め直すと水分が飛んで味が濃くなることがあるので、その場合は少量の水か酒を加えて調整してください。


どて煮に関するよくある質問
- 八丁味噌がないときの代用は?
-
赤だし味噌や合わせ赤味噌で代用できます。普通の味噌しかない場合は、醤油を小さじ1ほど加えるとコクが出て、どて煮らしい味に近づきます。
- 子ども向けにアレンジできる?
-
砂糖を少し多めにして甘めに仕上げ、もつの代わりに鶏もも肉や豚バラ肉を使うと子どもでも食べやすくなります。七味は使わず、刻みネギのみを添えましょう。
- 炊飯器でも作れる?
-
下処理したもつまたは牛すじ、調味料、水を炊飯器に入れて通常炊飯すれば、ほぼ放置で作れます。ただし機種により火力が異なるため、仕上がりが硬い場合は再度炊飯してください。調理機能のない一部機種では注意が必要です。
- どて煮は日持ちしますか?
-
冷蔵で3〜4日、冷凍で約1か月が目安です。毎日1回火を通すと、冷蔵でも1週間ほど持たせやすくなります。
- もつを使わないでどて煮は作れますか?
-
作れます。鶏もも肉、厚揚げ、こんにゃく、大根だけの「精進風どて煮」でも、赤味噌の黄金比さえ守ればどて煮らしい味になります。
まとめ|黄金比と下処理を押さえれば家でも本格どて煮
どて煮は、赤味噌・みりん・砂糖・酒の黄金比と、豚もつや牛すじの丁寧な下処理さえ押さえれば、家庭の鍋でも名古屋の味が再現できる料理です。
この記事で紹介したポイントをもう一度おさらいします。
- 味噌の黄金比は「赤味噌:みりん=1:1+砂糖半量〜同量」
- 豚もつはたっぷりの湯でゆでこぼし、流水でぬめりを洗う
- 牛すじは茹でこぼしを2回行い、脂をしっかり取り除く
- 圧力鍋を使えば加圧15〜20分で時短調理できる
- 一晩寝かせると味が染み込んで格段においしくなる
- 余ったら「どてめし」や味噌煮込みうどん風にアレンジ
週末にじっくり作って平日の夕食に使い回せる、作り置きにも向いた一品です。ぜひお気に入りの黄金比を見つけて、家庭の定番レシピに加えてみてください。


