庭の渋柿や、いただいた渋柿を前に「吊るし柿にしてみたいけれど、カビさせずに作れるだろうか」と迷っていませんか。干し柿づくりは手順そのものは単純ですが、干す時期・場所・もむタイミングを外すと、カビが出たり渋が残ったりします。
この記事では、吊るし柿(干し柿)に向く渋柿の選び方、皮むきから吊るすまでの5ステップ、干している間の手入れ、完成の見極めとカビの見分け方、できあがった干し柿の保存までを順にまとめました。要点は、11月ごろに軸の付いた渋柿の皮を厚くむき、雨の当たらない風通しのよい場所で3〜4週間干すことです。
吊るし柿作りの全体像|作る時期・完成までの日数・用意するもの
吊るし柿は、気温が下がって空気が乾く晩秋に、皮をむいた渋柿を軒下などに吊るして作ります。干し始めから渋が抜けるまでがおよそ3週間、好みの硬さに仕上げるまで含めると3〜4週間ほどが目安です。
作業そのものは1日目の皮むきと吊るしでほぼ終わり、あとは天気を見ながら取り込み・もむ・確かめるの繰り返しになります。ここでは、作り始める時期の決め方、完成までにかかる日数、最初にそろえる道具の3つを先に整理します。時期と道具さえ決まっていれば、柿を手に入れた当日に迷わず作業へ入れます。
作る時期は気温が下がる11月ごろ
干し柿づくりでいちばん大事なのは気温です。気温が高いうちに干すと、乾く前に実が熟してやわらかく崩れたり、表面にカビが出たりしやすくなります。干す場所の気温が20℃を下回るころが目安とされ、多くの地域では11月が作りどきです。埼玉県の資料でも、蜂屋柿を使うつるし柿は11月初旬の晴れた日に収穫するよう紹介されています。
反対に、遅すぎると干し上がる前に厳しい冷え込みで実が凍り、食感が落ちることがあります。寒冷地では早めに、暖かい地域では11月下旬〜12月上旬に始めるなど、住んでいる地域の天気予報で「最高気温が20℃を下回り、晴れが続く週」を選ぶと失敗が減ります。

完成までの日数の目安
和歌山県の農産物加工の資料では、皮をむいて干した柿は3週間ほどで渋が抜けて食べられるようになるとされています。ここから先は好みで、外はしっかり、中はとろりとした「やわらかめ」なら3週間前後、全体に噛みごたえのある「硬め」なら4週間以上かけて乾かします。
日数はあくまで目安で、晴れて風のある日が続けば早く、曇りや雨が多ければ遅くなります。カレンダーで日数を数えるより、後半の「完成の見極め」で紹介する色・硬さ・重さを見て判断するほうが確実です。
用意するもの
- 渋柿(軸がT字に残っているもの)
- ピーラーまたは包丁(皮むき用)
- ひも(麻ひもやビニールひも)または干し柿用ハンガー
- 鍋と熱湯、または焼酎(アルコール度数35度)と霧吹き(表面の殺菌用)
- キッチンペーパー、物干し竿や軒下のフック
軸のない柿や数が多いときは、柿のヘタ部分をはさんで吊るせるクリップ式の干し柿用ハンガーがあると作業が早く進みます。ひもで結ぶ手間がなく、柿同士の間隔も一定に保てます。
干し柿に向く渋柿の選び方
干し柿にするのは、生では渋くて食べられない渋柿です。渋柿は糖度が高く、干して水分が抜けると甘さがぐっと凝縮します。選ぶときに見るのは「品種」「軸の残り方」「実の硬さと傷」の3点で、なかでも吊るせるかどうかを決める軸の形がいちばん大切です。初めてなら10個前後から始めると、物干し竿1本に収まり、毎日の確認も負担になりません。ここでは、店や直売所で見かける主な品種、軸の確認のしかた、甘柿では作れない理由と実の選び方を順に説明します。
よく使われる渋柿の品種
干し柿用として出回る渋柿には、地域ごとに定番の品種があります。どれでも作れますが、実の大きさで乾く日数が変わるため、目安として知っておくと便利です。
| 品種 | 主な産地・特徴 | 干し柿にするときの目安 |
|---|---|---|
| 平核無(ひらたねなし) | 新潟・山形・和歌山など。種がなく扱いやすい | 中くらいの大きさで初心者向き |
| 刀根早生(とねわせ) | 平核無の早生系。出回りが早い | 早めに手に入るが、暖かい時期は干すのを待つ |
| 蜂屋(はちや) | 岐阜など。大きな縦長の実 | 大きいぶん乾くまで日数がかかる |
| 市田柿(いちだがき) | 長野県南部。小ぶりの実 | 小さく乾きやすい |
| 西条(さいじょう) | 広島・島根など。縦に溝がある細長い実 | 中くらいで、果肉がきめ細かい |
店頭で品種名が分からない場合は、直売所で「干し柿用」「吊るし柿用」と書かれた渋柿を選べば問題ありません。市田柿など、産地で作られる干し柿の出荷時期は12月の果物をまとめた記事でも触れています。

軸がT字に残っている実を選ぶ
吊るし柿の場合、ひもを結ぶのは柿の実ではなく、ヘタの上に残った枝(軸)です。和歌山県の資料でも、柿はヘタと軸を残して収穫し、軸をひもに通して干す手順が示されています。軸が枝ごとT字形に残っていると、ひもがすっぽ抜けず、2個1組で結んで竿に掛けられます。
自分で収穫するときは、実のすぐ上ではなく、枝を数cm残してT字になるように剪定ばさみで切ります。購入する場合は、軸が短く切りそろえられた柿だとひもが掛からないことがあるので、袋を手に取って確かめましょう。軸がない柿でも、前の節で触れたクリップ式のハンガーを使えば吊るせます。
甘柿では作れない理由と、実の選び方
富有や次郎などの甘柿でも干すことはできますが、干し柿には渋柿が向いています。農林水産省の郷土料理の紹介でも、甘い柿はかびやすいため干し柿には渋柿を使うとされています。渋柿は干している間に渋が抜けて甘くなるので、「渋いから捨てる」のではなく、干し柿にするのがいちばんの活かし方です。
実を選ぶときは、次の点を確かめてください。
- 指で押してもへこまない硬さがある(熟してやわらかい実は干す途中で崩れる)
- 皮がだいだい色に色づいている(青みが強い実は甘さが乗りにくい)
- 傷・打ち身・虫食いがない(傷んだ部分からカビが出やすい)
- 大きさがそろっている(乾き具合をそろえやすい)
近くで渋柿が手に入らないときは、秋に通販で出回る干し柿用の渋柿を取り寄せる方法もあります。軸付き・クリップ付きで届くものを選ぶと、届いたその日に皮むきから始められます。
吊るし柿の作り方|皮むきから吊るすまでの5ステップ
吊るすまでの作業は、軸を整える・皮をむく・表面を殺菌する・ひもに結ぶ・干すの5つです。10個なら1時間ほどで終わります。仕上がりを左右するのは、皮を厚めにむいて残さないことと、むいた実をなるべく手で触らずに素早く吊るすことの2点です。皮をむいた実の表面はとても傷みやすいので、道具と干す場所を先に整えてから皮むきに取りかかりましょう。
軸がT字に残っているか確かめ、長すぎる枝は数cmに切りそろえます。ヘタの4枚の萼(がく)は、反り返った部分を包丁で切り落とし、ヘタの周りの皮をぐるりとむいておきます。埼玉県の資料では、ヘタの周りを二重にむく手順が紹介されています。
ヘタの下から先端に向かって、ピーラーで縦に皮をむきます。生で食べるときより厚めにむき、むき残しを作らないのがコツです。皮が残った部分は乾き方がそろわず、しわが寄って見た目が悪くなります。
カビを防ぐため、むいた柿の表面を殺菌します。軸を持って沸騰したお湯に10秒ほどくぐらせるか、焼酎を霧吹きで全体に吹きかけます。熱湯にくぐらせた場合は、キッチンペーパーで水気を軽く押さえてから次へ進みます。
ひもの両端にT字の軸を結び、2個1組にして竿に振り分けで掛けます。何組も並べるときは、柿同士が触れ合わないように間隔をあけてください。くっついた部分は乾かずに湿ったまま残り、そこからカビが出やすくなります。
軒下やベランダの屋根の下など、雨が直接当たらず風がよく通る場所に吊るします。干し始めの10日ほどは実の水分が多いため、強い直射日光が長時間当たる場所より、明るい日陰で風が抜ける場所のほうが表面だけが急に硬くなるのを防げます。

柿の皮をきれいにむくコツや、包丁とピーラーの使い分けは、柿の下処理をまとめた記事で詳しく紹介しています。

干している間の手入れ|もむタイミングと置き場所
吊るしたあとの手入れは、「表面が乾いたら軽くもむ」「雨の日と暖かい日は取り込む」「鳥や虫を寄せつけない」の3つです。毎日つきっきりで見る必要はありませんが、朝に天気予報を確認し、帰宅後に柿の表面をさっと見る習慣をつけると、カビや食べられる被害を早めに防げます。手がかかるのは水分の多い前半の2週間ほどで、後半は乾き具合を確かめるだけになります。ここでは、もむ時期と力加減、天気ごとの置き場所の判断、鳥や虫への備えを順に説明します。
もむのは表面が乾いて膜が張ってから
干し柿は表面から先に乾くため、そのままだと外は硬く、中に水分の多い部分が残りがちです。途中で実をもむと中の果肉がほぐれて水分が均一になり、渋も抜けやすくなります。和歌山県の資料では、干している途中に1〜2回もんで中の水分を均一にするよう案内されています。
1回目の目安は、吊るして1週間〜10日ほどたち、表面が乾いて薄い膜が張ったころです。指先で実全体を包み、中心に向かって押すように軽くもみます。表面がまだしっとりしているうちにもむと、膜が破れて果汁がにじみ、カビの原因になります。2回目は、さらに1週間ほどたって実がひとまわり小さくなったころに行います。もむ前には手をよく洗い、乾いた清潔な手で触れましょう。
雨の日・暖かい日・ベランダで干すときの注意
雨に濡れた柿や、湿気の多い日が続いたときは、カビが出やすくなります。雨や雪の予報が出たら、ひもごと室内に取り込み、窓際など風の通る場所に吊るしておきましょう。季節外れの暖かい日が続くときも同じで、日中だけ室内の涼しい場所に移すと安心です。
マンションのベランダで干す場合は、壁際より手すり側のほうが風が通ります。エアコンの室外機の前は温風が当たるので避けてください。取り込んだ日に室内で扇風機の弱風を当てると、乾燥の遅れを取り戻しやすくなります。
鳥や虫を防ぐ工夫
甘くなり始めた干し柿は、ヒヨドリやカラスなどの鳥に狙われやすくなります。せっかく育てた柿をつつかれないよう、目の細かいネットで周りを覆うか、吊り下げ式の干し網の中に入れて干すと安心です。ネットが柿に直接触れていると、その部分が乾きにくくなるので、少し離して張るようにしましょう。
干し網を使う場合は、柿を平らに並べるだけで済み、ひもを結ぶ手間も省けます。小さな虫も入りにくくなるので、ベランダで干すときにも向いています。
完成の見極めとカビの見分け方
干し柿の完成は、日数ではなく色・硬さ・重さで判断します。表面が乾いて黒っぽいあめ色になり、指で押すとほどよい弾力が返ってくれば食べごろです。乾くにつれて表面に白い粉が出てくることもありますが、これは多くの場合カビではありません。仕上がりの硬さは、取り込む日を早めるか遅らせるかで好みに合わせられるので、途中で1個ずつ味見をしながら決めていきます。ここでは、仕上がりの見極め方と、白い粉とカビの見分け方、よくある失敗とその原因を順にまとめます。
完成の目安(色・硬さ・重さ)
埼玉県のつるし柿の資料では、表面が乾いて黒っぽくなり、ところどころに白い粉がふいたら完成としています。色の変化は自然なもので、だいだい色から茶色、さらに黒っぽいあめ色へと濃くなっていきます。迷ったら1個だけ取って半分に切り、中の状態を確かめましょう。
- やわらかめ:外側に弾力があり、切ると中はとろりとしたゼリー状。福島県のあんぽ柿のように、水分を半分ほど残した仕上がり
- 硬め:全体に噛みごたえがあり、中までしっかり詰まっている。山梨県などのころ柿のように、水分を25〜30%ほどまで乾かした仕上がり
重さも目安になります。皮をむいた直後に1個だけ重さを量っておくと、どこまで乾いたかを数字で追えます。硬めに仕上げるなら、むいた直後の4分の1前後まで軽くなるのがひとつの目安です。

白い粉(柿霜)とカビの違い
干し柿の表面に出る白い粉は「柿霜(しそう)」と呼ばれ、実の中の糖分が表面に出て結晶になったものです。乾燥が進んだ干し柿に出る、仕上がりのしるしのようなものです。カビとは見た目と出る場所が違うので、次の表で見分けてください。
| 見るところ | 白い粉(柿霜) | カビ |
|---|---|---|
| 見た目 | 粉砂糖のようにさらさら。指でこするとなめらかに広がる | 綿毛のようにふわふわ、または斑点状に盛り上がる |
| 色 | 白一色 | 白のほか、緑・青・黒などが混じる |
| 出る場所 | しわの部分や表面全体にうっすら均一 | ヘタの周り、柿同士が触れた部分、傷のある部分など一か所から広がる |
| 出る時期 | 乾燥が進んだ仕上げの段階 | 干し始めの水分が多い時期や、雨のあと |
よくある失敗と原因
うまくいかなかったときは、症状から原因を逆にたどると次の年に活かせます。代表的な失敗をまとめました。
| 症状 | 主な原因 | 次からの対策 |
|---|---|---|
| カビが出た | 気温が高い時期に干した、雨に当たった、柿同士が触れていた | 20℃を下回ってから干す。雨の日は取り込む。間隔をあける |
| 渋が残った | 乾燥が足りない、もんでいない | 表面が乾いたら1〜2回もみ、日数を延ばす |
| 外だけ硬く中がぐじゅぐじゅ | 干し始めに強い日差しで表面が急に乾いた | 最初の10日ほどは明るい日陰で干し、途中でもむ |
| 実が落ちた・崩れた | 熟してやわらかい実を使った、軸が短かった | 硬い実を選ぶ。軸がない柿はハンガーを使う |
| 硬くなりすぎた | 乾かしすぎた | やわらかめが好みなら3週間前後で取り込む |
硬くなりすぎた干し柿は、細かく刻んでヨーグルトやなますに混ぜたり、クリームチーズと合わせたりすると食べやすくなります。
できた干し柿の保存方法と日持ち
干し上がった吊るし柿は、すぐに食べきらない分を冷蔵か冷凍に移すのが基本です。手作りの干し柿は市販品のように水分量が管理されていないため、特にやわらかめに仕上げたものは常温に長く置くとカビが出やすくなります。食べる時期に合わせて置き場所を選びましょう。保存の目安を表にまとめました。
| 保存方法 | 日持ちの目安 | 保存のしかた |
|---|---|---|
| 常温 | 数日〜1週間ほど | 暖房の当たらない涼しい場所。硬めに仕上げたものに限る |
| 冷蔵 | 2〜3週間ほど | 1個ずつラップで包み、保存袋に入れて野菜室へ |
| 冷凍 | 3か月〜半年ほど | 1個ずつラップで包み、冷凍用保存袋に入れて空気を抜く |
日数は目安で、仕上がりの硬さによって前後します。冷凍した干し柿は、食べる数時間前に冷蔵庫へ移して自然解凍すると、ねっとりした食感が戻ります。半解凍のままでも、ひんやりした和菓子のように食べられます。冷凍のしかたと解凍の方法は、柿の冷凍保存の記事で詳しく紹介しています。

よくある質問
- 吊るし柿と干し柿は違うものですか?
-
吊るし柿は、皮をむいた渋柿をひもで吊るして干す作り方の干し柿のことで、干し柿の一種です。あんぽ柿やころ柿も干し柿の仲間で、硫黄でいぶしてから干す、平らに並べて転がしながら干すなど、産地ごとに製法と仕上がりの硬さが違います。
- 軸(枝)のない渋柿でも作れますか?
-
作れます。ヘタをはさむクリップ式の干し柿用ハンガーを使うか、吊り下げ式の干し網に並べて干してください。網で干す場合は、ときどき柿の向きを変えて、網に触れている面も乾かすのがコツです。
- マンションのベランダでも作れますか?
-
屋根があって雨が直接当たらず、風が通るベランダなら作れます。室外機の前は避け、雨の日は室内に取り込みましょう。鳥が来やすい場所なら、干し網に入れて干すと安心です。
- 3週間たっても渋いときはどうすればいいですか?
-
乾燥が足りていない可能性が高いので、もう一度軽くもんでから1週間ほど干し続けてください。曇りや雨の日が多い年は、乾くまでに日数がかかります。大きな品種ほど中心の渋が抜けるまで時間がかかる点も覚えておきましょう。
- 白い粉が出ないのは失敗ですか?
-
失敗ではありません。白い粉はしっかり乾いた干し柿に出やすいもので、やわらかめに仕上げた場合は出ないことも多いです。色と弾力で食べごろと判断できれば、粉の有無は気にしなくて大丈夫です。
まとめ|吊るし柿は時期・皮むき・もむタイミングで仕上がりが決まる
吊るし柿は、気温が20℃を下回る11月ごろに、軸の付いた硬い渋柿の皮を厚めにむき、殺菌してから雨の当たらない風通しのよい場所で3〜4週間干して作ります。
- 渋柿は硬くて傷がなく、軸がT字に残っているものを選ぶ
- 皮はむき残しのないよう厚めにむき、熱湯か焼酎で表面を殺菌する
- 柿同士が触れないように吊るし、雨の日は取り込む
- 1週間〜10日たって表面が乾いたら、軽くもむ(途中で1〜2回)
- 白い粉は糖分の結晶。ふわふわした綿毛や色付きの斑点はカビなので食べない
- すぐ食べない分は冷蔵で2〜3週間、冷凍なら3か月〜半年ほどが目安
干し柿づくりは、天気と相談しながら少しずつ手をかけるほど、甘くきれいに仕上がります。最初の年は数個から試し、干す場所の風通しや日当たりの癖をつかんでおくと、次の年はもっと多く作れるようになります。晩秋の晴れが続く週を見つけて、ぜひ挑戦してみてください。
