10月は、秋の実りがいっせいに食卓へ届く月です。ところが「10月の行事食」と聞いても、9月の十五夜やお彼岸ほどはっきりした料理が思い浮かばない、という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、10月に行われる行事とその行事食を、由来までさかのぼって整理します。読み終えるころには、十三夜に何を供えればよいのか、えびす講やハロウィンに何を作ればよいのかが、迷わず決められるようになります。
先に結論をお伝えすると、10月の行事食の主役は「栗・豆・新米」です。9月が「収穫を祝う」月だとすれば、10月は「実った米や木の実に感謝する」月。この軸さえつかめば、それぞれの行事のつながりが見えてきます。
10月の行事食とは?秋の実りと行事のカレンダー
10月の行事食は、稲刈りと木の実の収穫が終わる時期に集中しています。夏のように「暑さをしのぐ食べ物」ではなく、その年に実ったものを供えて分け合う、感謝の色合いが濃いのが特徴です。
10月の主な行事一覧(2026年)
2026年の10月には、次のような行事があります。日付が年によって動くものもあるため、その年の暦を確認してから準備すると安心です。
| 行事 | 2026年の日付 | 代表的な行事食 |
|---|---|---|
| 衣替え | 10月1日 | (特になし) |
| 寒露(かんろ) | 10月8日頃 | 秋の根菜・きのこ |
| スポーツの日 | 10月12日(第2月曜) | おにぎり・お弁当 |
| 神嘗祭(かんなめさい) | 10月17日 | 新米・赤飯 |
| えびす講 | 10月20日 | 尾頭付きの鯛・けんちん汁・べったら漬け |
| 秋の土用 | 10月20日頃〜11月6日頃 | 「た」のつくもの・青い食べ物 |
| 十三夜(後の月) | 10月23日 | 月見団子・栗・枝豆 |
| 霜降(そうこう) | 10月23日頃 | 体を温める煮物 |
| ハロウィン | 10月31日 | かぼちゃ料理 |
秋祭りも10月に集中します。地域によって日付はさまざまですが、その年に収穫した米で作った赤飯やお神酒を供える点は共通しています。
9月との違い|「収穫を祝う」から「実りに感謝する」へ
9月の行事食は、重陽の節句の菊酒や十五夜の里芋のように、これから迎える収穫を先取りして祝う性格がありました。対して10月は、稲刈りが終わり、栗や豆が実際に手元に届いたあとの行事が並びます。
そのため10月の行事食には、その年の新しい実りをまず供え、そのあと人が食べるという順序が繰り返し出てきます。神嘗祭の新米も、十三夜の栗も、えびす講の鯛も、この流れの中にあります。
献立を考えるときも、この順番を意識すると迷いません。凝った料理を用意するより、旬のものをひとつ選んで丁寧に炊く。それだけで十分に行事食として成立します。
十三夜(2026年は10月23日)の行事食
10月最大の行事食は、十三夜のお月見です。2026年の十三夜は10月23日。旧暦9月13日にあたる夜で、9月25日だった十五夜に続く「二度目のお月見」です。
十五夜が中国から伝わった風習であるのに対し、十三夜は日本で生まれた行事とされています。少し欠けた月を美しいとする感覚は、日本独特のものです。「後(のち)の月」とも呼ばれます。
供えるものは月見団子とススキ、そして栗と枝豆(大豆)。この2つが十三夜の行事食を決定づけています。
栗名月・豆名月と呼ばれる理由
十三夜には「栗名月」「豆名月」という別名があります。ちょうど栗と豆の収穫期にあたり、その年に採れたものを月に供えたことに由来します。十五夜が里芋を供えて「芋名月」と呼ばれるのと同じ考え方です。
家庭で用意するなら、ゆで栗をそのまま器に盛るのがいちばん簡単です。もう少し手をかけるなら栗ごはん。米に栗と塩、酒を加えて炊くだけで、行事らしい一品になります。
豆は枝豆でかまいません。旧暦9月ごろに収穫される晩生の枝豆を供えたのが始まりとされ、現在も塩ゆでの枝豆を添える家庭が多く見られます。黒豆の枝豆が手に入る時期でもあります。
栗の下ごしらえは、鬼皮のかたさで手間が大きく変わります。圧力鍋を使うと加圧時間が短く済み、皮もむきやすくなります。


月見団子の数|十五夜との違い
月見団子の数は、その夜の名前に合わせるのが基本です。十五夜は15個、十三夜は13個。省略する場合は、十五夜が5個、十三夜が3個とされます。
| お月見 | 2026年の日付 | 団子の数 | 供えるもの |
|---|---|---|---|
| 十五夜(中秋の名月) | 9月25日 | 15個(略式5個) | 里芋・ススキ |
| 十三夜(後の月) | 10月23日 | 13個(略式3個) | 栗・枝豆・ススキ |
| 十日夜(とおかんや) | 11月18日(11月10日に行う地域も) | 特に決まりなし | ぼた餅・稲の束 |
積み方は、13個なら下段に9個、上段に4個。ピラミッド状に積み、月から見える側に供えます。三方(さんぽう)がなければ、白い紙を敷いた平皿でかまいません。
市販の団子でも問題ありません。行事食は形式より、月を見上げる時間を家族で共有することに意味があります。
「片見月」を避ける習わし
十五夜と十三夜は「二夜の月」と呼ばれ、両方そろえて見るものとされてきました。どちらか一方だけを見ることを「片見月(かたみづき)」「片月見」といい、縁起がよくないとして避ける習わしがあります。
もともとは江戸の遊里で、同じ客に二度足を運んでもらうために広まった言い伝えとされます。厳密に守る必要はありませんが、9月に十五夜を楽しんだ家庭なら、10月の十三夜もあわせて行うと季節の区切りがつきやすくなります。
9月の行事食は、こちらの記事で詳しくまとめています。十五夜の里芋やお彼岸のおはぎとあわせて振り返ると、秋の行事のつながりが見えてきます。

実りに感謝する行事食|神嘗祭・秋祭り・えびす講
10月には、その年の収穫を神に捧げる行事が続きます。家庭で大がかりな支度をする必要はありませんが、新米を炊く、赤飯を蒸すといった形で取り入れる家庭は今も少なくありません。
神嘗祭(10月17日)と新米・赤飯
神嘗祭は、伊勢神宮でその年に収穫された新穀を天照大御神に捧げる祭りです。10月17日に行われ、神宮の年間行事のなかでも最も重い祭祀とされています。
この時期は各地の神社でも秋祭りが重なります。家庭での行事食としては、新米を炊いて最初のひと膳を供えるのがもっとも素直な形です。おかずを増やすより、ごはんそのものを主役にします。
新米はやわらかく水分を含んでいるため、いつもより水をやや控えめにすると粒立ちよく炊き上がります。炊きたてを塩むすびにすると、米の甘みがわかりやすくなります。
赤飯を蒸す地域も多く見られます。もち米と小豆(またはささげ)で炊き、祝いの膳として供えます。もち米とうるち米の違いを整理しておくと、赤飯やおこわの失敗が減ります。

えびす講(10月20日)|尾頭付きの鯛・けんちん汁
えびす講は、商売繁盛と豊漁・豊作を願って恵比寿神をまつる行事です。関東では10月20日に行う地域が多く、地域によって1月10日や11月20日に行うところもあります。
恵比寿神は釣り竿と鯛を抱えた姿で知られるため、行事食も尾頭付きの鯛が定番です。塩焼きにして頭を左に向け、恵比寿像の前に供えます。鯛が手に入らなければ、尾頭付きの魚であれば代用されてきました。
もうひとつの定番がけんちん汁です。大根・にんじん・里芋・ごぼう・こんにゃくを油で炒めてから煮る、具だくさんの汁物。10月に採れる根菜がそのまま具材になります。
- 主菜:鯛の塩焼き(尾頭付き。切り身なら丁寧に焼くだけでも可)
- 汁物:けんちん汁(秋の根菜をまとめて使い切れる)
- 副菜:べったら漬けなどの大根の漬物
- 主食:新米のごはん、または赤飯
べったら漬けとべったら市
べったら漬けは、皮をむいた大根を塩漬けにしたあと、米麹と砂糖で漬け込んだ甘い漬物です。表面に麹が「べったり」付くことが名前の由来とされています。
東京・日本橋の宝田恵比寿神社周辺では、えびす講の前日にあたる10月19日から20日にかけて「べったら市」が開かれます。えびす講に供える魚や道具を売る市として始まり、やがてべったら漬けの露店が名物になりました。
市販品を買うのが手軽ですが、家庭でも作れます。大根を厚めの半月切りにして塩で下漬けし、水気を切ってから米麹と砂糖、少量の塩で本漬けにします。冷蔵庫で数日おけば食べごろです。甘みが強いので、切り分ける厚さは薄めがおすすめです。
秋の土用と寒露・霜降|季節の変わり目の食べ方
10月後半は、暦のうえで冬へ向かう節目が重なります。行事らしい派手さはありませんが、食卓を切り替えるきっかけとして知っておくと便利です。
秋土用(10月20日頃〜)の「た」のつくもの・青い食べ物
土用は立春・立夏・立秋・立冬それぞれの前、約18日間を指します。秋の土用は立冬の前にあたり、2026年はおおむね10月20日頃から11月6日頃までです。
夏の土用に「う」のつくもの(うなぎ・梅干し)を食べる習わしがあるように、秋の土用には「辰(た)の日」に「た」のつくもの、または青い食べ物を食べるとよいとされてきました。大根、玉ねぎ、たこ、さんま、さばなどが該当します。
10月はさばやさんまが脂を蓄える時期でもあるため、この習わしは旬とよく噛み合います。焼き魚に大根おろしを添えるだけで、秋土用らしい一皿になります。
寒露・霜降の頃に取り入れたい食材
寒露は10月8日頃、霜降は10月23日頃。二十四節気のうえでは、露が冷たくなる時期から、霜が降り始める時期へと移ります。朝晩の冷えがはっきりしてくるころです。
この時期の食卓は、生ものや冷たい料理から、煮物・汁物へと切り替えていくとちょうどよくなります。里芋やごぼう、れんこんといった根菜、きのこ類が出そろい、煮込むほど食べやすくなる食材が増えます。
秋の土用は季節の変わり目で体調を崩しやすい時期でもあります。消化のよい煮物や汁物を中心に据えると、無理なく冬の食卓へ移行できます。
ハロウィン(10月31日)の行事食とかぼちゃ料理
10月31日のハロウィンは、日本の伝統行事ではありませんが、いまでは10月の食卓に定着した行事です。行事食といえばかぼちゃ。子どもと一緒に作りやすい料理が多いのも特徴です。
かぼちゃを食べるようになった経緯
ハロウィンの起源は、古代ケルトの収穫祭「サウィン」にさかのぼるとされています。1年の終わりにあたるこの夜、死者の霊が戻ってくると考えられ、悪霊を追い払うために火をたく風習がありました。
ランタンにはもともとカブが使われていました。移民によってこの風習がアメリカへ伝わった際、現地で手に入りやすかったかぼちゃに置き換わり、いまのジャック・オー・ランタンの形になったとされています。
つまり、かぼちゃは「ハロウィンだからかぼちゃ」というより、収穫祭の主役がその土地の実りに置き換わった結果です。10月が日本のかぼちゃの出回り期と重なることもあり、行事食として無理なく定着しました。

家庭で作りやすいかぼちゃ料理
手間の少ない順に並べると、次のようになります。1/4カットのかぼちゃ1個で、どれも作れる分量です。
皮をむいて薄切りにし、玉ねぎと一緒に水で煮ます。やわらかくなったらつぶし、牛乳または豆乳でのばして塩で味を調えます。ミキサーがなくても、フォークでつぶせば作れます。
3cm角に切り、皮を下にして鍋に並べます。ひたひたより少なめの出汁に砂糖としょうゆを加え、落としぶたをして15分ほど煮ます。煮崩れを防ぐには、途中で混ぜないことがコツです。
ゆでてつぶしたかぼちゃを使います。グラタンは牛乳とチーズを、パイは市販の冷凍パイシートを合わせれば、オーブンまかせで仕上がります。子どもと形を作る工程が楽しめます。
かぼちゃにはβ-カロテンやビタミンE、食物繊維が含まれています。皮の近くに多く含まれるため、煮物では皮を残したまま調理すると無駄がありません。

10月の行事食を楽しむコツ
行事食は、すべてを完璧にそろえる必要はありません。10月は行事の数が多い分、一つひとつを軽く取り入れるほうが続きます。
旬の食材から入る
行事から献立を考えると身構えてしまいますが、売り場で目についた旬のものから逆算すると気楽です。栗が並んでいれば十三夜、さんまや大根が安ければ秋土用、かぼちゃが山積みならハロウィン、という具合です。
10月に出回る食材は、行事食の材料とほとんど重なります。何が旬なのかを押さえておけば、献立と行事が自然につながります。


子どもに由来を伝えるひと工夫
由来をそのまま説明しても、子どもにはなかなか届きません。10月の行事は「なぜその食べ物なのか」がはっきりしているので、質問の形にすると伝わりやすくなります。
- 「十三夜はどうして栗名月っていうと思う?」→ 栗が採れる季節だから
- 「お団子は何個いるかな?」→ 十三夜だから13個
- 「恵比寿さまは何を持ってる?」→ 釣り竿と鯛。だから鯛を供える
- 「ハロウィンのランタン、昔は何で作ってた?」→ かぼちゃではなくカブ
団子を数えながら積む、栗の皮をむくのを手伝ってもらう、といった手を動かす作業を挟むと記憶に残ります。行事食は、味そのものより準備の時間が思い出になります。
10月の行事食は「栗・豆・新米」を軸に考えると迷いません。十三夜に栗を供え、神嘗祭の時期に新米を炊く。この2つだけでも、秋の節目は十分に感じられます。
10月の行事食に関するよくある質問
- 2026年の十三夜はいつですか?
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2026年10月23日です。旧暦9月13日にあたります。十五夜(2026年は9月25日)のおよそ1か月後で、年によって日付が変わるためその年の暦で確認してください。
- 十三夜の月見団子は何個供えますか?
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13個が基本です。省略する場合は3個とされます。下段に9個、上段に4個を積み、白い紙を敷いた平皿にのせれば三方がなくても供えられます。
- 十五夜を見逃したら十三夜はやらないほうがいいですか?
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そのようなことはありません。片方だけ見る「片見月」を避ける習わしはありますが、江戸時代の言い伝えが元とされるもので、決まりごとではありません。十三夜だけを楽しんでも問題ありません。
- えびす講には必ず鯛が必要ですか?
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尾頭付きの鯛が定番ですが、地域によっては別の魚で代用されてきました。鯛が手に入らない場合は、尾頭付きの魚やけんちん汁だけでも構いません。
- 秋の土用に食べるとよいものは何ですか?
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「辰の日」に「た」のつくもの、または青い食べ物を食べる習わしがあります。大根、玉ねぎ、たこ、さんま、さばなどが該当します。2026年の秋土用は10月20日頃から11月6日頃までです。
- ハロウィンにかぼちゃを食べるのは日本だけですか?
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日本だけではありません。アメリカではパンプキンパイが定番です。ただし現地でランタンに使う品種と食用の品種は異なり、日本のように煮物やポタージュにする文化は独自のものです。
まとめ|10月の行事食で秋の実りを味わう
10月の行事食は、その年に実った栗・豆・新米を供えて分け合う行事が中心です。9月の「収穫を祝う」段階から一歩進み、手元に届いた実りへ感謝する月だと考えると、それぞれの行事のつながりが見えてきます。
2026年10月23日の十三夜には、月見団子13個と栗・枝豆を。神嘗祭の時期には新米を炊き、えびす講には尾頭付きの鯛とけんちん汁を。秋の土用には「た」のつくものや青い魚を、10月31日には子どもとかぼちゃ料理を。
すべてをそろえる必要はありません。売り場に並ぶ旬のものをひとつ選んで、いつもより少し丁寧に調理する。それだけで、10月の食卓は行事食になります。
10月の行事食の軸は「栗・豆・新米」。十三夜(2026年は10月23日)に栗と豆を供え、新米のごはんを一膳。この2つを押さえれば、秋の節目はきちんと味わえます。
