6月は梅雨の季節ですが、実は古くから伝わる行事食がいくつもあります。6月30日の「水無月(みなづき)」、夏至の食べ物、入梅にあわせた梅仕事、そして父の日のごちそう。どれも季節の節目を食卓で味わうための知恵です。
この記事では、2027年の正確な日付とあわせて、6月の行事食を「いつ・何を・なぜ食べるのか」がひと目でわかるように整理しました。買える場所やおいしい食べ方まで、家庭で取り入れやすい形で紹介します。
6月の行事食の主役は、夏越の祓に食べる和菓子「水無月」。三角形と小豆に、暑気払いと厄除けの願いが込められています。
6月の行事食一覧|いつ何を食べる?
まずは6月の行事食を一覧で確認しましょう。日付・行事・食べ物・由来をまとめると、季節の流れがつかみやすくなります。なお日付は2027年(令和9年)の国立天文台のデータにもとづいています。
6月の行事は、日付の決まり方が三通りに分かれます。夏越の祓は6月30日で毎年固定、父の日は「6月第3日曜」と曜日で決まるため日付が動きます。夏至と入梅は太陽の位置をもとに決まる暦日なので、年によって一日ほど前後します。

| 日付(2027年) | 行事 | 主な食べ物 | 意味・由来 |
|---|---|---|---|
| 6月11日ごろ | 入梅(にゅうばい) | 梅干し・梅酒・梅シロップ | 梅の収穫期。保存食を仕込む「梅仕事」 |
| 6月21日 | 夏至(げし) | タコ・焼き餅 | 一年で最も昼が長い日。豊作祈願 |
| 6月20日 | 父の日(第3日曜) | ごちそう・黄色い食べ物 | 父への感謝を伝える日 |
| 6月30日 | 夏越の祓(なごしのはらえ) | 水無月・夏越ごはん | 半年分の厄を落とし、暑気払い |
表に並ぶ四つは、暦のなかでの立場もそれぞれ違います。夏至は二十四節気、入梅は雑節と呼ばれる暦日、夏越の祓は神社の神事、父の日は近代に広まった記念日です。買い物の順でいえば、上旬は梅の実、中旬は父の日の食材、下旬は水無月と、月の前半から後半へ順に出番が回ってきます。仕込んで置いておけるのは梅の保存食だけで、水無月と父の日の料理はその日のうちに食べるものです。
水無月(夏越の祓)|6月30日に食べる和菓子の由来
6月の行事食でいちばん有名なのが「水無月」です。6月30日の「夏越の祓」にあわせて食べられる、京都発祥の和菓子。半年間にたまった厄を落とし、残る半年の無病息災を願う意味があります。
夏越の祓は6月30日で、年によって日付が動くことはありません。12月31日の年越の祓と対になる神事で、一年をちょうど半分に区切る折り返しにあたります。神社では茅(ち)の輪をくぐって半年分の穢れを落とし、その日の菓子として水無月が用意されます。
水無月ってどんな和菓子?
水無月は、白いういろうの上に甘く煮た小豆をのせ、三角形に切り分けた和菓子です。もっちりとしたういろうと、ほどよい甘さの小豆の組み合わせが特徴。京都を中心に、6月になると和菓子店やスーパーの和菓子コーナーに並びます。
生地は上新粉に小麦粉と砂糖を合わせて蒸したういろうで、店によって葛粉や白玉粉を混ぜる割合が変わります。配合の違いは食感に出て、もっちり寄りのものと、歯を入れるとほろりと切れるものがあります。ういろうの色は白のほかに抹茶と黒糖があり、抹茶は宇治産、黒糖は沖縄産の砂糖を使う店が多く見られます。上にのせる小豆は甘く煮たものが基本ですが、甘納豆を使う店もあります。水無月は農林水産省の「うちの郷土料理」にも京都府の料理として収録されています。
ういろうと同じく米の粉から作る和菓子に、秋の月見団子があります。上新粉・白玉粉・だんご粉で食感がどう変わるかは、こちらで比べています。

三角形と小豆に込められた意味
水無月の形と材料には、それぞれ意味があります。昔の宮中では、6月に冷たい氷を口にして暑気払いをする習わしがありました。しかし庶民には氷は高価で手が届きません。そこで氷をかたどった和菓子が生まれたとされています。
- 三角形:暑気を払う「氷の欠片」を表している
- 白いういろう:氷の見た目に見立てたもの
- 上の小豆:赤色が邪気をはらう厄除けの意味
つまり水無月は、暑気払いと厄除けの両方を兼ねた、理にかなった行事食なのです。
小豆がのるのは上の面だけで、下には白い生地が厚く残ります。切り分けたときに白と赤の層が上下に分かれて見えるのは、氷の上に小豆を散らした見立てをそのまま形にしているからです。
おいしい食べ方・買える場所
水無月は冷蔵庫で軽く冷やすと、ういろうの食感が引き締まっておいしくなります。緑茶やほうじ茶と合わせると、小豆の甘さがより引き立ちます。

切り分けてあるものを買えば、おやつにも来客のおもてなしにも使えて便利ですよ。
買える場所は、和菓子店・スーパーの和菓子売り場・百貨店の地下食品売り場・一部のコンビニなど。6月の中旬以降に並ぶことが多いので、見かけたら早めに手に取るのがおすすめです。
冷やしすぎると生地がかたくなるため、食べる20分ほど前に冷蔵庫から出しておくと食感が戻ります。切り分けるときは包丁を軽く濡らすと、ういろうが刃につきにくくなります。日持ちは当日から翌日までを目安にする店が多く、買った日に食べきる前提で個数を決めると無駄が出ません。京都や関西では和菓子店の定番として6月のあいだ並びますが、ほかの地域では6月の最終週にまとめて出ることが多く、月末の売り場は夕方になると品薄になりがちです。
夏至の食べ物|2027年は6月21日
2027年の夏至は6月21日(月)です。夏至は一年で最も昼が長い日。じつは夏至の行事食には全国共通のものがなく、地域ごとに食べるものが違うのが面白いところです。
夏至は二十四節気のひとつで、太陽の位置をもとに決まります。日付が決め打ちではないため、毎年6月21日前後で一日ほど動きます。暦の上では春分と秋分のちょうど中間にあたる日でもあり、梅雨のさなかに来る年が多いのが日本の夏至です。
関東の焼き餅/関西のタコ
夏至に食べる代表的なものを地域別に見てみましょう。
- 関西:タコ。稲の根がタコの足のように八方へしっかり張ることを願う
- 関東:新小麦で作った焼き餅。神様に供えて五穀豊穣を祈った
- 三重県(伊勢):みょうがやうどん。暑い時期に食べやすいものを選んだ
どれも田植えを終えた農家が、豊作を願う気持ちから生まれた食べ物です。
関西でタコが選ばれた背景には、瀬戸内でこの時期のタコが身を締める頃合いと重なることもあります。ゆでダコなら刺身のほか、きゅうりと合わせた酢の物、しょうがを効かせた炊き込みごはんにも回せます。関東の焼き餅は、刈り取ったばかりの小麦を粉にして焼いたものが原型です。切り餅を焼いてしょうゆを塗るだけでも、同じ趣向を食卓に置けます。
半夏生(7月2日)のタコ・うどん・半夏生餅
夏至から数えて11日目の「半夏生」は、2027年は7月2日。田植えを終える目安とされた日で、ここにも行事食があります。
半夏生に食べるもの:関西では、稲がしっかり根づくよう願ってタコを食べます。香川県ではうどん、福井県では焼き鯖(さば)が定番。奈良県では小麦ともち米でついた「半夏生餅」にきなこをまぶして食べる風習が残っています。
半夏生は太陽の黄経が100度に達する日で、国立天文台の暦でも7月2日ごろにあたります。田植えを終える区切りとされてきた日で、香川県ではこの日が「うどんの日」にもなっています。1980年に香川県製麺事業協同組合が定めたもので、麦の収穫後に打ったうどんを農作業の手伝いに振る舞った土地の習わしが下敷きです。
なぜ夏至にこれを食べる?
夏至や半夏生の食べ物に共通するのは、「田植えの労をねぎらい、豊作を願う」という思いです。タコの足、しっかりした餅、力のつく食材。どれも稲がたくましく育つことへの願いが形になっています。
全国共通の食べ物がないぶん、家庭で取り入れるときは選び方に幅があります。住んでいる土地に言い伝えがあればそれに従い、なければ手に入りやすいものを一品置けば十分です。ゆでダコは通年で売り場に並び、切り餅も常備しやすい食材です。夏至そのものの日付が動くので、前後の週末にずらして食べても区切りの意味は変わりません。
入梅と梅仕事|6月11日ごろの保存食づくり
2027年の入梅は6月11日ごろ。入梅とは梅雨入りの目安となる暦の日で、ちょうど梅の実が熟す時期と重なります。この季節に行う保存食づくりが「梅仕事」です。
入梅は雑節と呼ばれる暦日のひとつで、太陽の黄経が80度に達する日にあたります。毎年6月10日から11日ごろに来るため、日付が大きくずれることはありません。気象庁が地方ごとに出す梅雨入りの発表とは別のもので、暦の入梅より実際の梅雨入りが半月ほど遅れる年もあります。梅の実が青果売り場に出るのは、この暦日と前後する時期です。
梅干し・梅酒・梅シロップ
梅仕事の定番は、次の3つです。湿気が増す季節に備え、保存性の高い食材を仕込む昔ながらの知恵です。
- 梅干し:塩漬けにして干す。ごはんのお供や保存食に
- 梅酒:氷砂糖と焼酎に漬ける。3か月ほどで飲める
- 梅シロップ:氷砂糖に漬けて水や炭酸で割る。子どもも楽しめる
梅にはクエン酸が含まれ、すっきりとした酸味が特徴です。暑い時期の食事に取り入れやすい食材として、昔から親しまれてきました。
三つは、仕込んでから口にできるまでの時間と手間が違います。梅シロップは氷砂糖に漬けて2週間ほど、梅酒は3か月ほど、梅干しは漬けたあとに三日ほど干す工程が入るため、食べ頃は夏の土用を過ぎてからです。道具もシロップと梅酒は保存びんがあれば足りますが、梅干しには重石とざるが要ります。
梅酒を家で漬けるときは、酒税法の決まりが関わります。国税庁の説明では、自分で飲むために、酒税が課税済みでアルコール分20度以上の酒に漬ける場合は酒類の製造に当たらない扱いです。米や麦、ぶどうなどを一緒に漬け込むことは認められていないので、梅と氷砂糖だけで仕込むのが基本になります。
梅仕事を始めるタイミング
梅仕事は、青梅や完熟梅が店頭に出回る6月が本番です。作りたいものによって、使う梅の状態が変わります。
梅酒や梅シロップには、かたい青梅が向いています。色が変わる前のものを選びましょう。
梅干しには、黄色く熟して甘い香りがする完熟梅が向いています。
梅は傷みやすいので、買ったその日のうちに作業を始めるのがおすすめです。



初めてなら、失敗が少なくて2週間ほどで楽しめる梅シロップから始めるのがおすすめです。
つまずきやすいのは、仕込んだあとの数日です。梅シロップは砂糖が底に固まったままだと発酵が進みやすいので、一日一回びんを傾けて全体をなじませます。表面に白い泡が浮いてきたら、シロップだけを鍋に移して弱火で温め、あくを引いてから冷ますと落ち着きます。梅干しは梅の水気をふき取ってから漬け、重石をのせて梅酢を早く上げるのがカビを防ぐ近道です。
父の日の食べ物|2027年は6月20日(第3日曜)
2027年の父の日は6月20日(日)。6月第3日曜日にあたり、翌日が夏至です。父の日には決まった行事食はありませんが、感謝を込めたごちそうを用意する家庭が多いです。
父の日は曜日で決まる行事なので、日付は毎年6月15日から21日のあいだで動きます。一年のうちでも日が長い時期にあたり、夕方の明るいうちから食卓を整えられるのはこの時期ならではです。行事食が定まっていないぶん、料理の格式より、その家で食べ慣れたものを選ぶほうが場に合います。
定番の献立・ごちそう
父の日の食卓では、お父さんの好物を中心にしたごちそうが定番です。よく選ばれるメニューを挙げてみましょう。
- お寿司やお刺身などの特別感のある料理
- ステーキや焼肉などのスタミナ料理
- ビールや日本酒に合うおつまみ
- 手作りのケーキやデザート
かしこまった料理でなくても、いつもより少し手をかけた一品があれば十分に気持ちは伝わります。
献立を組むときは、特別にする皿を一つに絞ると当日が楽になります。刺身や寿司を買って主菜にあて、汁物と副菜だけ作れば、台所に立つ時間は普段と変わりません。梅雨どきは揚げ物の後始末に手を取られやすいので、焼き物や蒸し物に寄せると片づけまで含めて早く終わります。前日にたれを合わせておく、肉を漬け込んでおくといった下ごしらえも、当日の余裕につながります。
黄色い食べ物を添える理由
父の日には黄色いものを贈る習慣があります。これは父の日のシンボルカラーが黄色とされているためです。食卓でも、黄色を意識した一品を添えると父の日らしさが出ます。
黄色は主菜を変えなくても足せます。かぼちゃの煮物、パプリカのマリネ、黄桃を添えたヨーグルト。どれも支度に時間がかからず、食卓の印象だけを変えられます。器やランチョンマットに黄色を選ぶ方法もあり、料理の中身はそのままで父の日らしさが出ます。梅雨で出かけにくい年ほど、こうした一手間が食卓の気分を変えてくれます。
7月は七夕と土用の丑の日が控えています。翌月の行事食はこちらでまとめています。


よくある質問
- 水無月はいつ食べるのが正しいですか?
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6月30日の「夏越の祓」に食べるのが本来の習わしです。ただし6月中であれば、いつ食べてもかまいません。和菓子として6月限定で楽しむ人も多くいます。
- 夏至に食べるものは全国共通ですか?
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いいえ、地域によって異なります。関西はタコ、関東は焼き餅というように、土地ごとに違う行事食が伝わっています。全国共通の決まった食べ物はありません。
- 梅仕事は6月以外でもできますか?
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梅の旬が6月のため、この時期が最適です。青梅は6月上旬から、完熟梅は中旬以降に出回ります。梅が手に入りにくい時期は冷凍梅を使う方法もあります。
- 水無月は家でも作れますか?
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作れます。ういろうの生地は上新粉に小麦粉と砂糖、水を合わせて混ぜ、四角い型に流して蒸し器で30分ほど蒸すのが基本の流れです。上にのせる小豆は市販の甘納豆や小豆の缶詰で代用でき、蒸し上がりを冷ましてから三角に切り分けます。生地を二回に分けて蒸すと小豆が沈みにくく、切り口の層がきれいに出ます。
- 夏越ごはんとはどんな料理ですか?
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6月30日に食べるごはんものとして近年広まった料理で、公益社団法人米穀安定供給確保支援機構が2015年から提唱しています。雑穀を混ぜたごはんに丸いかき揚げをのせ、おろしだれをかけるのが基本の形。丸い形は神社の茅の輪に見立てたものです。水無月とは役割が違うため、主食に夏越ごはん、菓子に水無月という組み合わせも成り立ちます。
6月の行事食を食卓で楽しむコツ
6月の行事食は、梅雨で気分が沈みがちな季節に、季節の移ろいを感じさせてくれます。すべてを完璧にこなす必要はありません。気になったものを一つ取り入れるだけでも、暮らしに彩りが生まれます。
水無月を一切れ買う、梅シロップを仕込む、父の日に黄色い一品を添える。小さな行事食から始めれば、6月の食卓がぐっと豊かになります。
梅雨どきは、置き場所にも気を配ると失敗が減ります。水無月のような生菓子は室温だと表面が乾きやすいので、買った日のうちに食べきると安心です。砂糖や塩を使う保存食は湿気で固まりやすく、びんの口をよくふいて密閉し、直射日光の当たらない場所に置きます。梅を干す作業は、晴れが続く予報の日を選ぶと途中で取り込む手間がありません。
夏至と父の日が重なる年は、一度の食卓で両方を兼ねられます。主菜を父の日のごちそうにして、ゆでダコの小鉢をひとつ添えれば、夏至の言い伝えも同時に取り入れられます。日付が離れている年は、下旬の夏越の祓まで間があるので、上旬のうちに梅を仕込んでおくと後半が身軽になります。買い物に出る回数を増やしたくないなら行事を二つに絞り、家族の予定が読めるなら暦どおりに一つずつ追うと無理がありません。
6月は旬の食材も豊富な季節です。行事食とあわせて、旬の野菜や魚、果物も取り入れると、より季節を楽しめます。下記の記事もあわせてご覧ください。
















