秋になると、しそ(大葉)の枝先に細長い穂が立ち、小さな粒がびっしり並びます。これがしその実です。抜いて捨ててしまうのはもったいない部分で、塩漬けにしておくと冬まで香りを楽しめます。
とはいえ、いざ作ろうとすると迷う点がいくつもあります。いつ穂を摘めばいいのか、アク抜きは必要なのか、塩は何割入れれば失敗しないのか。分量ひとつで日持ちも味も変わってきます。
この記事では、収穫の見きわめ方から下ごしらえ、塩分量別の3パターン、保存期間の目安、うまくいかなかったときの立て直し方までをまとめました。結論を先に言うと、しっかり保存したいなら塩は実の重さの18〜20%、1〜2か月で食べきるなら10%前後が扱いやすい配合です。
しその実の塩漬けとは?穂じそとの違いと収穫の適期
しその実の塩漬けは、穂から外した粒を塩で漬け込んだ保存食です。ぷちぷちした食感と、青じそよりも濃く感じる香りが持ち味で、ごはんのお供や薬味として少しずつ使います。特別な道具は要らず、必要なのは塩と保存容器だけです。
紛らわしいのが呼び名です。同じ穂でも、育ち具合によって使われ方も名前も変わります。買うときや調べるときに混乱しやすいので、まずは整理しておきましょう。
| 呼び名 | 穂の状態 | 主な使い方 |
|---|---|---|
| 花穂じそ(はなほじそ) | 花が半分ほど咲いている | 刺身のあしらい・天ぷら |
| 穂じそ(ほじそ) | 花が散り、実がふくらみ始めた頃 | 塩漬け・しょうゆ漬け・佃煮 |
| しその実 | 穂から外した粒そのもの | 漬け物全般・薬味 |
逆に早すぎると粒が小さく、量がまとまりません。判断に迷ったら、指で穂をつまんでみてください。粒がぷっくりしていて、軽くしごくとぽろぽろ外れるようなら適期です。硬くて外れにくいものは、そのまま佃煮に回すほうが向いています。
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下ごしらえ|穂から実をしごく方法とアク抜き2通り
下ごしらえは「穂から実を外す」「アクを抜く」の2段階です。ここを丁寧にやるかどうかで、仕上がりのえぐみと色がはっきり変わります。時間はかかりませんが、量が多いと手が疲れるので、テレビでも見ながら進めるくらいの気持ちがちょうどいいでしょう。
穂から実をしごいて外す
穂を摘んだら、まず水に放して虫やごみを落とし、ざるに上げて水気を切ります。次に穂の根元を指でつまみ、先端に向かって一気にしごくと粒が外れます。ボウルの上でやると散らばりません。
逆向き(先端から根元へ)にしごくと外れにくく、茎の欠片が混ざりやすくなります。硬い茎が混ざると口当たりが悪くなるので、外し終わったら軽く見て取り除いてください。穂20〜30本でだいたい100g前後が目安です。
さっとゆでるアク抜き(色をきれいに残す)
鍋に湯を沸かし、外した実を入れて30秒ほどでざるに上げます。すぐに冷水にとって粗熱を取り、ぎゅっと絞って水気を切ります。加熱するぶん色が鮮やかに落ち着き、見た目のよい仕上がりになります。
ゆですぎると香りが飛び、食感もやわらかくなりすぎます。「湯に入れて数えて30」くらいの短時間で切り上げるのがコツです。
水に浸けるアク抜き(香りを残す)
ボウルにたっぷりの水を張り、実を半日から1日ほど浸けます。途中で2〜3回水を替えると、アクが抜けやすくなります。加熱しないので香りは残りますが、色は茶色っぽく沈みがちです。
| 方法 | 所要時間 | 色 | 香り | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|
| さっとゆでる | 約1分 | 鮮やかに残る | やや飛ぶ | 見た目重視・混ぜごはん |
| 水に浸ける | 半日〜1日 | くすみやすい | よく残る | 香り重視・薬味使い |
| アク抜きなし | 0分 | そのまま | 強い | えぐみが気にならない人 |
どちらを選んでも塩漬けにはできます。初めて作るなら、失敗が少なく仕上がりも見やすい「さっとゆでる」方法から試すとよいでしょう。なお、アク抜きを省いても食べられますが、独特の渋みが残ります。
しその実の塩漬けの作り方|塩分量別の3パターン
作り方そのものは「水気を切った実に塩を混ぜて容器に詰める」だけです。違いが出るのは塩の割合で、ここが日持ちと味を決めます。まずは共通の手順を押さえましょう。
アク抜きして絞った状態で計量します。ここを量らずに目分量で進めると、塩分濃度が定まらず日持ちの予測が立ちません。
清潔なふきんかキッチンペーパーで包み、両手で押さえて水気を抜きます。水が残っているとカビや傷みの原因になるので、ここは念入りに。
ボウルに実と塩を入れ、全体に行き渡るよう手で軽く混ぜます。粒をつぶさないよう、押さずに返すように混ぜてください。
煮沸するか、アルコールで拭いた保存容器に詰めます。空気に触れる面を減らすと変色しにくいので、表面を平らにならしてから蓋をします。
冷蔵庫で2日ほどおくと塩が回り、水分が上がってきます。上がった水分は捨てずにそのままで構いません。
塩10%|1〜2か月で使い切る常備タイプ
実100gに対して塩10gの配合です。そのままごはんに乗せてちょうどよい塩気で、塩抜きの手間が要りません。日常的に食べるなら、この割合がいちばん扱いやすいでしょう。
ただし塩分が控えめなぶん、保存できる期間は短くなります。冷蔵で1か月前後を目安に使い切るつもりで、少量ずつ作るのが向いています。
塩18〜20%|冬まで持たせる長期保存タイプ
実100gに対して塩18〜20gと、しっかり効かせる配合です。梅干しの塩漬けに近い感覚で、常温に近い涼しい場所でも傷みにくくなります。秋にまとめて漬けて、少しずつ使いたい場合はこちらです。
そのままでは塩辛いので、使うときに水に10〜20分さらして塩抜きします。塩抜き後はしっかり絞ってから料理に使ってください。塩を抜きすぎると香りまで薄まるので、途中で少し味を見ながら調整するのがコツです。
薄塩5%前後|数日で食べきる少量タイプ
実100gに対して塩5g程度。ほぼ浅漬けの感覚で、しその香りをいちばん素直に感じられます。作った翌日から食べられますが、保存性はほとんどないと考えてください。
| 塩分 | 実100gあたりの塩 | 保存の目安(冷蔵) | 塩抜き |
|---|---|---|---|
| 薄塩(5%前後) | 5g | 3〜5日 | 不要 |
| 標準(10%前後) | 10g | 約1か月 | 不要 |
| 長期(18〜20%) | 18〜20g | 半年前後 | 必要 |
迷ったときは「食べきれる量かどうか」で選んでください。少量なら10%、たくさん採れて冬まで持たせたいなら18〜20%。この2択で考えると、ほとんどの場面で外しません。
保存期間と容器の目安|冷蔵と冷凍の使い分け
塩漬けにしたしその実は、冷蔵と冷凍のどちらでも保存できます。目安として、塩10%なら冷蔵で1か月前後、18〜20%なら半年前後まで持たせられます。ただし数字はあくまで目安で、水気の切り方や容器の清潔さで大きく変わります。
| 保存方法 | 期間の目安 | 向いている容器 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 冷蔵 | 1か月〜半年(塩分による) | ガラス瓶・ホーロー | 取り出しは必ず清潔な箸で |
| 冷凍 | 半年〜1年 | 保存袋・小分け容器 | 塩分があるので固まりにくい |
| 常温 | すすめない | ― | 気温が高い時期は避ける |
容器はガラス瓶かホーローが向いています。塩分の高いものを長く入れておくと、金属の容器はさびることがあるためです。プラスチックの保存容器でも作れますが、色やにおいが移りやすい点は知っておいてください。大きな瓶にまとめるより、小さめの瓶に分けたほうが、開け閉めの回数が減って長持ちします。
たくさん作ったときは、小分けにして冷凍しておくと便利です。塩が入っているためカチカチには凍らず、冷凍庫から出してすぐ箸で取れる程度の硬さで収まります。使う分だけつまめるので、開け閉めのたびに全体を傷めることもありません。
失敗パターンとリカバリー
つまずきやすいのは、塩加減・水気・えぐみの3か所です。多くは作り直さなくても立て直せます。まずは下の対処法を確認してください。
- しょっぱすぎる:使う分だけ水に10〜20分さらし、絞ってから使う
- 塩気が足りず不安:塩を追加して混ぜ直し、早めに冷凍へ回す
- 色が茶色くくすんだ:味に問題はない。気になるなら次回はゆでるアク抜きに変える
- えぐみが残る:水にさらす時間を延ばす。次回は水替えの回数を増やす
- 食感が硬い:収穫が遅れたサイン。刻んで佃煮やふりかけに回す
- 茎が混ざってしまった:食べる直前に取り除く。次回はしごいた後に一度ざるで振るう
とくに多いのが、水気の切り方が足りないケースです。絞ったつもりでも、粒の間には意外と水が残っています。ふきんで包んで両手で押さえ、もう一度絞れるかどうか確かめてから塩と合わせてください。ここでひと手間かけるだけで、日持ちの安定感がはっきり変わります。
一方で、諦めたほうがよい状態もあります。表面に白や黒のふわふわしたものが出た、糸を引く、酸っぱいような異臭がする。こうした変化が出たものは、もったいなくても処分してください。塩漬けは塩で傷みを抑える保存食ですが、水気や容器の汚れがあると塩分だけでは追いつきません。
塩漬けしその実の食べ方
塩漬けは、そのまま主役にするより「少し足す」使い方が向いています。香りと塩気が同時に入るので、いつもの料理に小さじ1杯加えるだけで印象が変わります。
- 炊きたてのごはんに混ぜる(青じそと違い、粒の食感が残る)
- おにぎりの具にする(塩気があるので味付けは不要)
- 冷ややっこ・納豆・卵かけごはんの薬味にする
- 大根やきゅうりの浅漬けに混ぜる
- 豚肉や鶏むね肉のソテーに散らす(脂のある料理と相性がよい)
- パスタやチャーハンの仕上げに加える
量の目安は、2人分の料理に対して小さじ1杯ほどです。香りが強いので、入れすぎると素材の味を覆ってしまいます。最初は控えめに入れて、食べながら足すくらいがちょうどよく収まります。混ぜごはんにする場合は、ごはん1合に対して大さじ1杯前後から試してみてください。
塩分18〜20%で漬けたものを使うときは、塩抜きを忘れないでください。塩抜きせずに料理へ入れると、他の調味料を足す余地がなくなります。逆に10%以下のものは、そのまま加えて塩の量を減らすと味が決まります。
しそは葉も実も余さず使える植物です。葉の使い道に困ったときは、こちらの記事も参考になります。



よくある質問
- アク抜きは必ず必要ですか?
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省いても食べられますが、独特の渋みが残ります。気にならない方はそのまま漬けても構いません。えぐみが苦手な場合や、人に配る予定があるなら、さっとゆでるか水にさらす方法をおすすめします。
- 赤じその実でも塩漬けにできますか?
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できます。作り方は青じその実と同じです。赤じその実は色が濃く出るため、混ぜごはんにすると全体がほんのり色づきます。香りは青じその実よりやや強めに感じられます。
- スーパーで穂じそが手に入らない場合は?
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店頭に並ぶ時期は9月下旬から10月ごろと短く、扱いのない店もあります。直売所や道の駅、家庭菜園のおすそ分けで手に入ることが多いようです。刺身用の花穂じそは実がまだ若く、塩漬けには量が足りません。
- 上がってきた汁は捨てたほうがいいですか?
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捨てずにそのままで構いません。塩分を含んだ液が実を覆っている状態のほうが、空気に触れにくく変色しにくくなります。ただし濁ってきたり、いつもと違うにおいがしたりする場合は使用を控えてください。
- 塩漬けとしょうゆ漬け、どちらが日持ちしますか?
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塩分をしっかり効かせた塩漬けのほうが長く保存できます。しょうゆ漬けは味がつくぶん、そのまま食べやすい一方で、冷蔵で1か月程度を目安に使い切るのが安心です。長く置きたいなら塩漬けで作り、使う前に味を足す方法もあります。
まとめ|塩の割合を決めれば失敗しない
しその実の塩漬けは、手順そのものはとても簡単です。押さえるべき点は、9月下旬から10月上旬という短い適期を逃さないこと、水気をしっかり絞ること、そして塩の割合を先に決めることの3つだけです。
すぐ食べるなら塩5〜10%、冬まで持たせるなら18〜20%。この基準さえ頭に入れておけば、量が多くても少なくても同じ手順で作れます。アク抜きの方法は、色を取るか香りを取るかで選んでください。
庭やプランターのしそが穂を付けたら、抜いてしまう前にひとつかみだけ摘んでみてください。小瓶ひとつぶんの塩漬けがあれば、秋から冬のごはんが少し楽しみになります。
